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文献詳細

雑誌文献

精神医学61巻9号

2019年09月発行

文献概要

特集 高齢者の精神科救急・急性期医療

社会的困難状況にある精神障害をもつ高齢者への緊急対応—東京都認知症専門医療事業での経験を踏まえて

著者: 橋本直季1 東出香23 熊谷直樹23

所属機関: 1東京都立多摩総合精神保健福祉センター 2東京都立中部総合精神保健福祉センター 3公益財団法人東京都医学総合研究所

ページ範囲:P.1057 - P.1065

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抄録 地域精神保健福祉では,認知症や統合失調症などがあるが家族の不在や非協力などもあり医療等に結びつかず,社会生活に困難を伴う高齢者(社会的困難事例)への緊急対応を時に求められる。都立の3精神保健福祉センターに設置された高齢者精神医療相談班(相談班)は,区市町村などの依頼で,社会的困難事例を含め顕著な精神症状を伴う認知症(疑い含む)事例に医師・看護師などが訪問相談を行ってきた。相談班の経験から,社会的困難事例の多くに精神症状のほか認知機能や身体機能の低下がみられ,身近な援助者の不在や家族の精神疾患罹患などに伴い支援導入への困難を伴い,区市町村や地域包括支援センターなどが関与していた。社会的困難事例の効果的な支援には,認知症支援の取組に加え,①精神保健福祉を含む関係機関の連携強化,②精神科医の参画,③広域専門機関の技術援助が必要であり,これらは精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築の一部と考えられる。

参考文献

1)内閣府:平成30年度版高齢社会白書.pp8-9, 2018
2)露木敏子:東京都における在宅痴呆高齢者の現状と課題(第1報)対応困難なケースを中心に.保健婦雑誌 49:51-59, 1993
3)露木敏子:東京都における在宅痴呆高齢者の介護の現状と課題(第2報)—その考察と今後の課題.保健婦雑誌 49:138-146, 1993
4)大島健一,佐藤陽子,久野美也子,他:東京都の高齢者精神医療相談班の活動について.老年精神医学雑誌 20:661-667, 2009
5)粟田主一:認知症早期支援体制—特にアウトリーチ(訪問型ケア)の課題.老年精神医学雑誌 24:883-889, 2013
6)厚生労働省:障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針(最終改正 平成29年).2017
7)認知症施策推進関係閣僚会議:認知症施策推進大綱.2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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