icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学62巻10号

2020年10月発行

文献概要

特集 精神科臨床における共同意思決定(SDM)

精神障害者の身体合併症医療における医療同意の考え方—倫理の観点から

著者: 桑原達郎1 滝上紘之2

所属機関: 1国家公務員共済組合連合会立川病院精神神経科 2慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室

ページ範囲:P.1351 - P.1358

文献購入ページに移動
抄録 精神科の臨床現場では,身体合併症に対する医療行為を遂行するにあたって,患者の同意が得られないことが数多い。その類型を,①医療行為に同意する患者,②医療行為に同意しないが,拒否もしない患者,③医療行為を積極的に拒否する患者,の3つに分け,それぞれについて倫理的な考察を加えた。わが国においては,法的代諾者の制度が存在せず,血縁を代諾者とする慣習が根強いが,それを補完する形での日本弁護士連合会の提言と現状に沿った対処法を述べた。さらに,個別に倫理的検討が必要な場合に,わが国では普及途上にある臨床倫理コンサルテーションが有用であることを述べ,立川病院で臨床倫理コンサルテーションの下に検討が行われた症例を提示した。

参考文献

1)渡邊衡一郎:精神科領域におけるshared decision makingのこれまでとこれから.精神科 36:411-418, 2020
2)桑原達郎,日高真:個々の身体疾患・診療場面における患者の心理・精神症状とその対応 精神疾患患者の手術.精神科治療学 19(増刊):279-283, 2004
3)桑原達郎:病識欠如・現実検討能力障害ゆえの身体治療拒否に対する対応.精神医学 60:587-594, 2018
4)Beauchamp TL, Childress JF:Principles of Biomedical Ethics. Oxford University Press, New York, 1979
5)日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会:がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き2018年版.金原出版,2018
6)ベームH,レェースルマイヤーA,レルヒH他著,新井誠監訳:ドイツ成年後見ハンドブック.勁草書房,2000
7)ジムニーGH,グロスバーグGT著,日本社会福祉会編訳:アメリカ成年後見ハンドブック.勁草書房,2002
8)英国医師協会著,新井誠訳:英国成年後見ハンドブック.勁草書房,2005
9)日本弁護士連合会:医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱.2011.日本弁護士連合会ホームページ https://www.nichibennren.or.jp/(2020年8月1日閲覧)
10)Jonsen AR, Sieger M, Winslade WJ著,赤林朗,蔵田伸雄,児玉聡他訳:臨床倫理学第5版—臨床医学における倫理的決定のための実践的なアプローチ.新興医学出版社,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?