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雑誌詳細

文献概要

特集 精神科臨床における共同意思決定(SDM)

共同意思決定支援ツール「質問促進パンフレット」と「診察サプリ」の作成の試み

著者: 熊倉陽介1 金原明子2 金田渉3 笠井清登2

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 2東京大学医学部附属病院精神神経科 3帝京大学医学部精神神経科学講座

ページ範囲:P.1359 - P.1367

抄録 筆者らは,精神疾患を持つ人が精神科の診察場面で主治医にききたいことをきき,より良いコミュニケーションをするための共同意思決定支援ツールである「質問促進パンフレット」と「診察サプリ」を作成したため紹介する。このような共同意思決定支援ツールを使用すること自体が,必ずしも共同意思決定を実践していることを意味するわけではないという点には注意が必要である。たとえば,患者が質問促進パンフレットを用いて医師とコミュニケーションをとろうとしても,医師が共同意思決定の実践に対して前向きでなければ患者は医師に相談しづらい可能性が示唆されている。共同意思決定は,患者と医師が協力して実施する継続的なプロセスであるという認識を持ちながら,具体的な場面ごとにどのようなツールや取り組みが有効か,臨床実践と研究を精緻に積み上げ,実装と普及を試みていくことが今後の課題であろう。

参考文献

1)Shirai Y, Fujimori, M, Ogawa A, et al:Patients' perception of the usefulness of a question prompt sheet for advanced cancer patients when deciding the initial treatment:a randomized, controlled trial. Psychooncology, 21:706-713, 2012
2)熊倉陽介:質問促進パンフレットを用いたリカバリー志向の診療.精神経誌 118:757-765, 2016
3)精神科外来における意思決定支援ツール開発・普及委員会:質問促進パンフレット.https://decisionaid.tokyo/(2020年9月11日閲覧)
4)金田渉:当事者とともに治療をつくり,回復をめざすための工夫.こころの科学 210:55-59, 2020
5)山口創生,熊倉陽介:統合失調症患者における共同意思決定—新しいアプローチとシステム.医学のあゆみ 261:941-948, 2017
6)職域・地域架橋型価値に基づく支援者育成(東京大学):診察サプリ.https://co-production-training.net/wp/wp-content/themes/co-production-training1.1/pdf/%E8%A8%BA%E5%AF%9F%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA%E7%B4%B9%E4%BB%8B.pdf(2020年9月11日閲覧)
7)Slade M:Implementing shared decision making in routine mental health care. World Psychiatry 16:146-153, 2017

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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