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文献詳細

雑誌文献

精神医学62巻10号

2020年10月発行

短報

新型コロナウイルス感染症を主題とした妄想を伴う退行期メランコリーの1例

著者: 永野渓舟1 大澤達哉1 針間博彦1

所属機関: 1東京都立松沢病院

ページ範囲:P.1413 - P.1416

文献概要

抄録 世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を妄想主題とした退行期メランコリーの1例を報告する。40代女性の患者は,同感染症に関する緊急事態宣言の発令に前後して,同感染症に罹患し周囲に感染させたという心気・罪業妄想とそれに伴う不安・抑うつが急性に出現した。自殺企図の出現を契機に入院し,抗精神病薬と抗うつ薬の併用投与により状態は軽快し退院した。うつと妄想を中心とする病像はいわゆる退行期うつ病に相当するが,主症状である罪業妄想がうつに伴って二次的に生じたのではない一次性の妄想であることから,特に退行期メランコリーと診断し得る例と考えられた。

参考文献

1)木村敏:いわゆる「鬱病性自閉」をめぐって.笠原嘉編:躁うつ病の精神病理1.弘文堂,pp91-116, 1981
2)Cotard J:Du délire d'énormité. Ann Méd Psychol 46:465-482, 1888
3)濱田秀伯,古茶大樹編:メランコリー—人生後半期の妄想性障害.弘文堂,2008
4)木村敏:うつ病と罪責体験.精神医学 10:375-380, 1968
5)Tellenbach H:Melancholie. Springer-Verlag, Berlin, 1961(木村敏訳:メランコリー 改訂増補版.みすず書房,p182, 1985)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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