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文献詳細

雑誌文献

精神医学62巻11号

2020年11月発行

文献概要

特集 若年性認知症の疫学・臨床・社会支援

特集にあたって フリーアクセス

著者: 粟田主一1

所属機関: 1東京都健康長寿医療センター研究所

ページ範囲:P.1427 - P.1428

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 一般に,65歳未満で発症する認知症を若年性認知症と呼んでいる。若年性認知症の有病者数は,高齢発症の認知症に比べると遥かに少ないが,年齢が若いために,就労の継続,世帯の経済,子の養育,老親を持つ場合には家族の多重介護など,本人・家族は,高齢発症の認知症とは異なる深刻な問題に直面する場合が多い。また,高齢発症の認知症と比較すると,社会全体の若年性認知症に対する理解は一般に低く,本人・家族は必要な情報やサービスに繋がれず,社会の中で孤立する場合も少なくない。こうしたことから,若年性認知症施策の立案に資する基礎資料を得るために,疫学的調査を行うことが強く求められてきた。
 わが国では,これまでに,全国規模の若年性認知症の有病率・生活実態調査が3回行われている。1回目は,1996年度に一ノ渡らが全国5都道府県で実施した調査であり,若年性認知症の有病率は18〜64歳人口10万対32人(未回収票に同率の有病者がいると仮定した場合47.8人),有病者数は2.56万人(同上3.74万人)と推計された1)。2回目は,2006〜2008年度に朝田らが全国7都道府県で実施した調査であり,未回収票に対し重み付けをして補正した若年性認知症有病率は18〜64歳人口10万人対47.6人,有病者数は3.78万人とされた2)。これらの調査結果を踏まえ,若年性認知症ハンドブック,若年性認知症コールセンター,若年性認知症支援コーディネーター,介護保険サービスにおける若年性認知症加算などさまざまな施策が実施されてきた。しかし,それでも,若年性認知症の当事者のニーズに合ったサービスは今なお著しく不足している。

参考文献

1)一ノ渡尚道:厚生省科学研究費補助金「若年性認知症の実態に関する研究」.平成8年度報告書(研究代表者:一ノ渡尚道).1997
2)朝田隆:厚生労働科学研究費補助金長寿科学総合研究事業「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」.平成20年度総括・分担研究報告書(研究代表者:朝田隆).2009
3)Awata S, Edahiro A, Arai T, et al:Prevalence and subtype distribution of early-onset dementia in Japan. Psychogeriatrics. 2020 Aug 19. doi:10.1111/psyg. 12596. Epub ahead of print. PMID:32815229.
4)粟田主一:厚生労働科学研究費補助金認知症政策研究事業「若年性認知症の人の生活実態調査と大都市における認知症の有病率及び生活実態調査」令和元年度総括・分担研究報告書(研究代表者:粟田主一),2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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