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特集 精神医学・医療の未来を拓く人材育成
文献概要
抄録 世界的にみた場合,精神科専門医となるためには少なくとも認知行動療法と力動的精神療法との2種類をスーパービジョンの下で経験することを求めている国が多数であることを考慮すると,日本の精神科専門医養成における精神療法教育の後進性は明らかである。すべての精神科専門医を精神療法の基礎的素養を身につけた精神科医として育成するためには,まずこの現状を正確に認識した上で解決策を考えなければいけない。そのためのステップとして,①院内での精神療法的事例検討会の開催,②オフィス訪問型の小グループコンサルテーション,③専門的精神療法のスーパービジョン,という3段階の教育システムを提案し,解説した。そして,これらを運用していく上での課題を,精神療法教育への関心と,指導者の確保という観点から明確化し,その解決策を検討した。これによって新専門医制度の研修項目の1つである「認知行動療法,力動的精神療法,森田療法および内観療法のいずれかの指導医の下での経験」が各研修施設で実践されていくことが期待される。
参考文献
1)Gabbard GO:Long-Term Psychodynamic Psychotherapy:A Basic Text, 2nd ed. American Psychiatric Publishing, Arlington, 2010(狩野力八郎監訳,池田暁史訳:精神力動的精神療法—基本テキスト.岩崎学術出版社,2012)
2)Winston A, Rosenthal RN, Pinsker H:Learning Supportive Psychotherapy:An Illustrated Guide. American Psychiatric Publishing, Arlington, 2011
3)井上隆志:カナダでのトレーニング.藤山直樹,津川律子,堀越勝他編:精神療法トレーニングガイド.日本評論社(印刷中)
4)藤山直樹:精神科専門医に求められる精神療法.精神経誌 117:1011-1014, 2015
5)藤山直樹:後期研修医へのコンサルテーションの経験—TPAR.東大精神科における新しい試み.精神経誌 118:787-793, 2016
6)池田暁史:心理学と精神医学—今後の精神医学において心理学や精神分析が果たす役割は何か.精神医学の基盤 4—精神医学における科学的基盤.学樹書院,2020
7)狩野力八郎:精神療法の教育・研修.2011.池田暁史,相田信男,藤山直樹編:力動精神医学のすすめ—狩野力八郎著作集2.金剛出版,2019
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