文献詳細
文献概要
特集 ベンゾジアゼピン受容体作動薬の問題点と適正使用
ベンゾジアゼピン受容体作動薬依存・乱用の実態
著者: 成瀬暢也1
所属機関: 1埼玉県立精神医療センター
ページ範囲:P.377 - P.386
文献購入ページに移動抄録 わが国の薬物乱用・依存問題は,危険ドラッグ問題にみられるように,「使っても捕まらない薬物」にシフトしている。その代表がベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下,BZ)である。その大半は医療行為として医療機関で処方される。BZを主とする鎮静薬は,精神科医療機関を受診する薬物関連障害患者の17.7%,「1年以内に使用のある例」の29.9%にも及び,いずれも覚せい剤についで第2位を占める。特徴としては,覚せい剤関連患者に比して,女性の割合が高く(52.2%),学歴は高く,気分障害(27.1%),神経症性障害・ストレス関連障害など(26.7%)の治療経過で依存症となる例が多い。医原性の要素が強いことから,処方するだけの治療に陥ることなく,処方医はそのリスクを十分認識した対応が求められる。重要なのは,長期処方,多剤処方,求められるままの処方などによって,不用意に処方薬依存を作らないことである。
参考文献
1)松本俊彦,宇佐美貴士,船田大輔,他:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査.平成30年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業 分担研究報告書,2019
2)松本俊彦,尾崎茂,小林桜児,他:わが国における最近の鎮静剤(主としてベンゾジアゼピン系薬剤)関連障害の実態と臨床的特徴—覚せい剤関連障害との比較.精神経誌 113:1184-1198, 2011
3)松本俊彦,伊藤翼,高野歩,他:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査.平成28年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業 分担研究報告書,2017
4)松本俊彦,成瀬暢也,梅野充,他:Benzodiazepine使用障害の臨床的特徴とその発症の契機となった精神科治療の特徴に関する研究.日本アルコール・薬物医学会雑誌 47:317-330, 2012
6)成瀬暢也:薬物依存症の回復支援ハンドブック 援助者,家族,当事者への手引き.金剛出版,pp115-138, 2016
7)Khantzian EJ:Self-regulation and self-medication factors in alcoholism and the addictions:Similarities and differences. In:Galanter M, ed. Recent Developments in Alcoholism. Plenum, New York, pp251-277, 1990
8)成瀬暢也:ハームリダクションアプローチ やめさせようとない依存症治療の実践.中外医学社,pp30-32, 2019
掲載誌情報