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文献詳細

雑誌文献

精神医学63巻10号

2021年10月発行

文献概要

特集 統合失調症の心理社会的治療—どのように使い分け,効果を最大化するか

IPS援助付き雇用—就労と医療の統合されたアプローチ

著者: 中原さとみ1

所属機関: 1桜ヶ丘記念病院

ページ範囲:P.1463 - P.1471

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抄録 IPS援助付き雇用(individual placement and support:IPS, evidenced-based supported employment)は,過去20年間に少なくとも20カ国で着実に普及している。わが国では徐々に広がりをみせているが,制度化には至っておらず,自主的な実践に留まっている。IPSは働くことを通して,クライアントの収入増加,自尊心の向上,社会的役割を得られ,入院,精神保健サービスの利用を減らし,アルコールや薬物などの物質使用の量を減らし,生活の質の向上などのよい影響をもたらすことだけでなく,医療機関において働くことを支える文化を醸成し,医療従事者の強みもまた大きく発揮できるサポートである。
 本稿ではIPSの概要や近年のIPSの状況のほかに統合失調症の事例を紹介する。今後の展望として制度化の上でIPSの体系的な研修や技術支援が普及において大きな鍵であり,マクロソーシャルワークを始めたところである。将来的にクライアントがどこで暮らしていても豊かな人生を送ることができるように医療政策などにIPSが位置付けられることを期待したい。

参考文献

1)Hayashi T, Yamaguchi S, Sato S:Implementing the individual placement and support model of supported employment in Japan:barriers and strategies. Psychiatri Rehab J 43:53-59, 2020
2)デボラ・R・ベッカー,Dパート・E・ドレイク著,大島巌,松為信雄,伊藤順一郎監訳:精神障害をもつ人たちのワーキングライフ—IPS:チームアプローチに基づく援助付き雇用ガイド.金剛出版,2004
3)Drake RE, Bond GR, Becker DR:Individual Placement and Support. Oxford University Press, Oxford, 2012
4)サラ・J・スワンソン,デボラ・R・ベッカー著,林輝男監訳,中原さとみ訳:IPS援助付き雇用—精神障害者の「仕事がある人生」のサポート.金剛出版,2021
5)IPS Employment Center:Employment Works! Newsletter, Spring, 2021
6)Drake RE, Sederer LI, Becker DR, et al:COVID-19, unemployment, and behavioral health conditions:the need for supported employment. Adm Policy Ment Health 48:388-392, 2021
7)Bond GR, Peterson AE, Becker DR, et al:Validation of the revised individual placement and support fidelity scale(IPS-25). Psychiatr Serv 63:758-763, 2012
8)Sasaki N, Yamaguchi S, Shimodaira M, et al:Development and validation of a Japanese fidelity scale for supported employment. Adm Policy Ment Health 45:318-327, 2018
9)Yamaguchi S, Sato S, Ojio Y, et al:Assessing stable validity and reliability of the Japanese version of the individualized supported employment fidelity scale:a replication. Neuropsychopharmacol Rep 41:248-254, 2021
10)中谷真樹,中原さとみ:精神科病院における就労支援.日本精神科病院協会雑誌 27:488-492,2008
11)中原さとみ,堀江太郎,岩下覚:統合失調症患者の個別就労支援.日本精神科病院協会雑誌 33:27-32, 2014
12)中原さとみ:希望を育むIPS援助付き雇用の可能性—ソーシャルワークの観点から.精神保健福祉 51:271-275, 2020
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14)日本IPSアソシエーション(Japan Individual Placement and Support Association:JIPSA):全国のIPSチーム. https://jipsa.jp/practitioner(2021年9月1日閲覧)
15)The Landscape:Deborah becker of individual placement and support(IPS)—an evidence based model of supported employment. 2020 https://www.buzzsprout.com/902338/3125254-deborah-becker-of-individual-placement-and-support-ips-an-evidence-based-model-of-supported-employment(2021年9月1日閲覧)
16)中原さとみ:IPS国際学会に参加して.精神障害とリハビリテーション 24:113-118, 2020
17)Becker DR, Bond GR:Commentary on special issue on individual placement and support(IPS)international. Psychiatr Rehab J 43:79-82, 2020
18)厚生労働省第:109回資料3障害福祉サービスの在り方等に関する意見.2021 https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000779274.pdf(2021年9月1日閲覧)
19)厚生労働省:障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会報告書.2021 https://www.mhlw.go.jp/content/12203000/000789575.pdf(2021年9月1日閲覧)
20)林輝男:精神障害者の「働きたい」を実現するために—IPS個別就労支援の効果と可能性.精神経誌 121:91-106, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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