精神医学63巻10号

2021年10月発行

特集 統合失調症の心理社会的治療—どのように使い分け，効果を最大化するか

社会生活スキルトレーニング(SST)

著者： 天笠崇¹²

所属機関： ¹静岡社会健康医学大学院大学 ²代々木病院精神科

ページ範囲：P.1483 - P.1490

抄録　本稿前半では，SSTの概要について述べた。すなわち，SSTとは，日本における普及経過，進化の方向性，「社会生活スキルトレーニング」と和語を改訂した背景，そしてSSTの基本骨格(練習の流れと技法)について述べた。その後，心理社会的治療として比較的歴史のあるSSTの意義と課題について述べた。本稿後半では，最新のメタ解析を引用し，筆者の臨床セッティングの下で「どのように使い分け，効果を最大化」できるか考察した。陰性症状の改善を望み，また期待する場合と，社会的知覚のトレーニングを適用することが重要で，後者について3つの工夫を紹介した。最後に，一般精神科臨床医にとって個人療法(個別SST)が役に立つと思われ，外来個人療法の場合に筆者がどのようにSSTを適用しているかを紹介した。

参考文献

1)坂野雄二：Well-beingを支援するCBT—SSTの今後を探る．SSTニューズレター 117：2-16, 2019

2)一般社団法人SST普及協会ホームページ．　https://www.jasst.net/(2021年9月1日閲覧)

3)西園昌久：平成21年度障害者保健福祉推進事業(自立支援調査研究プロジェクト)報告書 精神障害者への訪問サービスの援助技術の確立に向けた研究．2010

4)SST普及協会：主体的人生のための統合失調症リカバリー支援—当事者との共同創造co-productionによるSST実践マニュアル．2019

5)丹羽真一：リカバリーの時代とSST(生活技能訓練)．精神経誌 120：592-600, 2018

6)SST普及協会：Social Skills Trainingの日本語表現「社会生活技能訓練」を見直し「社会生活スキルトレーニング」と改訂いたしました．2020

7)R.P. リバーマン著，池淵恵美監訳：精神障害者の生活技能訓練ガイドブック．医学書院，pp106-107, 1992

8)西園昌久総監修：精神障害と回復—リバーマンのリハビリテーション・マニュアル．星和書店，p182, 2011

9)Steed L, Sohanpal R, Todd A, et al：Community pharmacy interventions for health promotion：effects on professional practice and health outcomes. Cochrane Database Syst Rev 12：CD011207, 2019

10)天笠崇：統合失調症治療とSST—エビデンスとプラクティスの狭間で．精神経誌 113：SS323-SS328, 2011

11)松田康裕：新規開発ソフト『Jcores』を用いた認知機能リハビリテーションの概要とその効果．デイケア実践研究 20：73-79, 2016

12)Turner D, McGlanaghy E, Cuijpers P, et al：A meta-analysis of social skills training and related interventions for psychosis. Schizophr Bull 44：475-491, 2018

13)エリック・L・グランホルム，ジョン・R・マッケイド，ジェイソン・L・ホールデン著，熊谷直樹，天笠崇，瀧本優子訳：認知行動SST—統合失調症者支援のための臨床実践ガイド 上・下巻．星和書店，2019

14)天笠崇：社会生活技能訓練(SST)による社会生活の改善—認知機能障害を視野に入れた介入．精神経誌 115：399-405, 2013