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文献詳細

雑誌文献

精神医学63巻10号

2021年10月発行

文献概要

特集 統合失調症の心理社会的治療—どのように使い分け,効果を最大化するか

統合失調症の作業療法—クライエント中心の方法論とリカバリー概念からみた意義と適応

著者: 池田望1 森元隆文1 横山和樹1

所属機関: 1札幌医科大学保健医療学部作業療法学第二講座

ページ範囲:P.1491 - P.1497

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抄録 精神障害に対する作業療法は治療医学の時代を経て,現在はリハビリテーションの専門領域として地域生活支援も担う本来のありように近づいている。作業療法における「作業」は利用する人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指し,統合失調症では精神症状,認知機能,IADLの改善や地域移行支援,就労支援,生活支援などを目的に治療手段,あるいは目標として用いられる。「作業」は利用者のニーズに合わせて提供される個別性・多様性のあるものであり,クライエント中心の志向性を持つ方法により対話を通して適応される。こうした方法論には「クライエント中心の作業療法」や「生活行為向上マネジメント」があり,近年中核的な概念となってきているパーソナルリカバリーを促進する可能性があるが,その検証は今後の課題である。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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