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文献詳細

雑誌文献

精神医学63巻10号

2021年10月発行

特集 統合失調症の心理社会的治療—どのように使い分け,効果を最大化するか

統合失調症の心理社会的治療に活かす当事者研究

著者: 向谷地生良1 鈴木和1

所属機関: 1北海道医療大学看護福祉学部臨床福祉学科精神保健福祉学講座

ページ範囲:P.1533 - P.1543

文献概要

抄録 リカバリーの概念が精神障害者リハビリテーションにおける共通の目標概念として認められ,定着が進められる中で,統合失調症における心理社会的治療の効果を最大化する上で大切になってくるのが,薬物療法への過度な偏重,専門家主導,関係者中心の治療や支援の状況を乗り越える「当事者主導」と「共同創造(co-production)」の視点である。
 当事者研究は,2000年に依存症や精神障害を経験した当事者と共同した自助の取り組みとしてはじまったが,その特徴である身近な困りごとや体験などを素材に「研究する」〔テーマを共有(co-research)し,自由なスタイルで研究(対話)を進め,その成果をみんなで共有し,社会への貢献を目指す〕一連の取り組みは,先の「当事者主導」と「共同創造(co-production)」を実現するアプローチとして注目されている。
 その活用においては,①当事者の語りへの積極的な関心と対話的傾聴,②内容が妄想的かどうかの評価や否定をしない態度,③分かりにくい語りや独特の言葉遣いにも,対話を通じて意味と内容を明確にしていく態度,④内容の視覚化にも努めながら対話を深める姿勢が重要になってくる。

参考文献

1)西園昌久:精神障害リハにおける包括的視点.蜂矢英彦,岡上和雄監修:精神障害リハビリテーション学.金剛出版,2000
2)厚生労働省:統合失調症の治療およびリハビリテーションのガイドライン作成とその実証的研究.精神・神経疾患研究委託費13指2(主任研究者:浦田重治郎).2004
3)丹羽真一:当事者研究は日本発・世界最先端の治療パラダイム.第12回当事者研究全国交流集会講演,2015
4)M. レーガン著,前田ケイ監訳:ビレッジから学ぶリカバリーへの道—精神の病から立ち直ることを支援する.金剛出版,2005
5)P. リバーマン著,西園昌久総監修,池淵恵美監訳,SST普及協会訳:精神障害と回復—リバーマンのリハビリテーション・マニュアル.星和書店,2011
6)浦河べてるの家:べてるねっと—浦河べてるの家の情報サイト.  https://bathel-net.jp(2021年9月1日閲覧)
7)野中猛:図説リカバリー—医療保健福祉のキーワード.中央法規,2011
8)ジュリー・レパー:リカバリー中心のメンタルヘルス・サービスへ—英国での経験から学ぶこと.平成23年度 東京都地域の拠点機能支援事業講演会.巣立ち会,2011
9)向谷地生良:花巻の原則.こころの科学 210:2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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