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文献詳細

雑誌文献

精神医学63巻11号

2021年11月発行

文献概要

特集 「実感と納得」に向けた病気と治療の伝え方

成人の神経発達症—主観と客観を総合した多軸的・階層的な視点から

著者: 本田秀夫12

所属機関: 1信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 2信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部

ページ範囲:P.1625 - P.1632

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抄録 神経発達症の診療対象となる成人例は,幼児期〜学童期に診断されて療育や特別支援教育などの支援を受けながら成人期に達している人たち(第1群)と,思春期以降に初めて診断される人たち(第2群)の2群に分けられる。特に後者では,1)生来性の素質としての自閉スペクトラム(AS)特性,2)AS以外の素質・素因,3)環境因が複雑に交絡した結果として生じる育ち方の3軸で多軸的・階層的に診断・評価を行う必要がある。診断の説明では,主観的所見と客観的所見を整理し,行動所見の確認→特性の判断→診断の順に段階的に説明する。現在は,全症例に対して常に神経発達症の特性に関する評価を行い,説明できる臨床力が,すべての精神科医に求められる段階に入ってきたといえる。

参考文献

1)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth ed. (DSM-5). American Psychiatric Publishing, Washington D.C., 2013(日本精神神経学会日本語版用語監修,髙橋三郎,大野裕監訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014)
2)本田秀夫:成人期におけるASDの臨床.チャイルド・ヘルス 24:37-39, 2021
3)本田秀夫:併存障害を防ぎ得た自閉症スペクトラム成人例の臨床的特徴.精神科治療学 27:565-570, 2012
4)本田秀夫:成人の発達障害—類型概念,鑑別診断および対応.精神経誌 116:513-518, 2014
5)本田秀夫:成人期の自閉スペクトラム.児童青年精神医学とその近接領域 56:322-328, 2015
6)本田秀夫:自閉スペクトラム症の視点からみた精神疾患・精神障害の概念の再検討—「パラレルワールド」の精神医学の必要性.精神科(印刷中)
7)本田秀夫:思春期・青年期の発達障害の人たちへの医療支援—特有の性格変化および併発する精神症状への対応—.萩原拓編著:発達障害のある子の自立に向けた支援—小・中学生の時期に,本当に必要な支援とは? 金子書房,pp108-112, 2015
8)本田秀夫:自閉症スペクトラム—10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体.ソフトバンククリエイティブ,2013
9)Hull L, Petrides KV, Allison C, et al:“Putting on my best normal”:social camouflaging in adults with autism spectrum conditions. J Autism Dev Disord 47:2519-2534, 2017
10)Hull L, Levy L, Lai MC, et al:Is social camouflaging associated with anxiety and depression in autistic adults? Molecular Autism 12:13, 2021
11)本田秀夫:自閉スペクトラムの人たちにみられる過剰適応的対人関係.精神科治療学 33:453-458, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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