文献詳細
特集 「実感と納得」に向けた病気と治療の伝え方
文献概要
抄録 パニック障害,うつ,摂食障害などのよくある精神疾患も,経過の中で芋づる式にトラウマが出てくる例があり,症状とトラウマは繋がっているとの説明が納得が得られやすい。適応障害でも傷つく度に過敏性が増していく逆耐性現象的な例がある。性的外傷体験などの被害者は自分が悪いと考えやすく,人生全体が自己否定的になりやすいので,自己否定自体がトラウマ症状であるとの説明が必要である。外傷体験を繰り返し述べる例では,支持的な傾聴を持続曝露療法的に活用し得る。トラウマは一時の外傷体験だったはずなのに,やがては患者の人生すべてを否定的にしてしまいやすい。これは火事における延焼にたとえられる。延焼を理解するだけでも延焼は下火になる。トラウマに気付いたら,心理教育によって延焼を抑え,希望に繋がる説明を行うことが求められる。
参考文献
1)村上伸治:現場から考える精神療法—うつ,統合失調症,そして発達障害.日本評論社,pp10-25, 2017
2)青木省三,村上伸治,鷲田健二編著:大人のトラウマを診るということ—こころの病の背景にある傷みに気づく.医学書院,pp172-185,2021
3)青木省三:ぼくらの中の「トラウマ」.ちくま書房,pp91-118, 2020
4)中井久夫:新版・精神科治療の覚書.日本評論社,pp42-59, 2014
掲載誌情報