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文献詳細

雑誌文献

精神医学63巻11号

2021年11月発行

文献概要

特集 「実感と納得」に向けた病気と治療の伝え方

依存症

著者: 松本俊彦1

所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部

ページ範囲:P.1683 - P.1690

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抄録 依存症は否認の病といわれ,かつては,「依存症からの回復には,まずは底つき体験を通じて,否認を打破することが必要」と信じられていた。しかし実際には,治療者が否認を打破しようとすればするほど,否認は強固なものとなり,最終的には治療中断をもたらしやすい。そうした反省から,むしろ今日の依存症臨床では,「否認は回復の始まりであり,底つき体験は治療の中,あるいは,自助グループの仲間の中で体験するものだ」という認識へと変化している。本稿では,中枢神経興奮薬である覚醒剤の依存症を取り上げ,いかにしたら「実感と納得」に向けた病気と治療の伝え方ができるのかについて,筆者自身の臨床経験に基づいて私見を述べた。

参考文献

1)松本俊彦:精神科救急及び急性期医療における薬物乱用および依存症診療の標準化と専門医療連携に関する研究.厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業(精神障害分野)精神科救急および急性期医療の質向上に関する政策研究(研究代表者 杉山直也)平成29年度総括・分担研究報告書.pp127-144, 2018
2)Khantzian EJ, Albanese MJ:Understanding Addiction As Self-Medication:Finding Hope Behind The Pain, Rowman & Littlefield Publishers, Ranham, 2008(松本俊彦訳:人はなぜ依存症になるのか—自己治療としてのアディクション.星和書店,2013)
3)Matsumoto T, Kamijo A, Miyakawa T, et al:Methamphetamine in Japan:the consequences of methamphetamine abuse as a function of route of administration. Addiction 97:809-818, 2002
4)Rawson AR:Chapter 4 Practical application of treatment strategies. Rawson AR:Treatment for Stimulant Use Disorders. Treatment Improve Protocol(TIP)Series 33. Substance Abuse and Mental Health Service Administration, Rockville, pp49-78, 1999
5)嶋根卓也:民間支援団体利用者のコホート調査と支援の課題に関する研究(ダルク追っかけ調査2020).厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)再犯防止推進計画における薬物依存症者の地域支援を推進するための政策研究(研究代表者松本俊彦)令和2年度総括・分担研究報告書,pp63-90, 2021
6)松本俊彦,今村扶美:SMARPP-24物質使用障害治療プログラム.金剛出版,2015
7)谷渕由布子,松本俊彦,今村扶美,他:薬物使用障害患者に対するSMARPPの効果:終了1年後の転帰に影響する要因の検討.日本アルコール・薬物医学会雑誌 51:38-54, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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