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特集 「実感と納得」に向けた病気と治療の伝え方
文献概要
抄録 摂食障害,特に神経性やせ症は,病識や治療動機を持つのが難しい疾患と考えられている。確かに診断基準にある通り,ある時点での低体重の深刻さを認識できないという意味では,病識に乏しいことが多いが,過去に比べて変化が起きていることや自分の思い通りに体重を操作できないことなどについての認識を持っていることは少なくない。初発の段階ではこのような認識を持っていない場合もあるが,入院事例の回復途上で振り返ると,発症時点でこのような問題があったことを認めるものが多い。これらの認識は,生活上の何らかの変化を経験する時にもみられやすい。摂食障害では,生活が固定化して変化が乏しい場合が多いため,生活に何らかの変化があった場合は,それによる本人の認識の変化を見逃さないようにすることが必要である。病気への認識を治療に結び付けられるよう,治療者は支援が必要である。
参考文献
1)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth ed. (DSM-5). American Psychiatric Publishing, Washington D.C., 2013(日本精神神経学会日本語版用語監修,髙橋三郎,大野裕監訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014)
2)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. Fourth ed. Text Revision(DSM-Ⅳ-TR). American Psychiatric Publishing, Washington D.C., 2000(髙橋三郎,大野裕,染矢俊幸訳:DSM-Ⅳ-TR精神疾患の診断・統計マニュアル.新訂版.医学書院,2002)
3)西園マーハ文,小原千郷,鈴木眞理:子どもの摂食障害の理解と治療.小児看護 43:41-45, 2020
4)西園マーハ文:対人援助職のための精神医学講座—グループディスカッションで学ぶ.誠信書房,pp133-135, 2020
5)藤平和吉,田川みなみ,長谷川哲也,他:自己効力感と自尊感情を通じた「生きる力の回復」を,神経性やせ症の当事者とともに振り返る.事例提示.精神科臨床サービス 15:528-535, 2015
6)日本摂食障害協会:新型コロナウイルス感染症が摂食障害に及ぼす影響.日本財団2019年度支援事業調査報告書. https://www.jafed.jp/pdf/covid-19/covid19_single.pdf(2021年10月1日閲覧)
7)西園マーハ文:摂食障害のセルフヘルプ援助—患者の力を生かすアプローチ.医学書院,2010
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