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文献詳細

雑誌文献

精神医学63巻12号

2021年12月発行

文献概要

特集 うつ病のニューロモデュレーション治療の新展開

ニューロモデュレーションの医療倫理

著者: 中澤栄輔1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野

ページ範囲:P.1767 - P.1774

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抄録 ニューロモデュレーション技術は情動に介入する技術であり,倫理的なリスク評価,インフォームド・コンセント,公正さの観点から吟味が必要である。リスク評価では,技術の安全性に関するエビデンスの蓄積を踏まえ,とりわけ技術がもたらす変化の不可逆性について考慮されるべきである。インフォームド・コンセントにおいては,そうしたリスクについての十全な説明が要請される。また,自己決定のパラドクスに配慮し,自律性を全人的に理解することがよりよい技術利用への糸口となる。ニューロモデュレーション技術には,多様な価値観を実現するポテンシャルがある。一様な価値観を背景とする格差社会の格差拡大のツールにならぬよう,社会的なコンセンサス・レギュレーションが求められる。

参考文献

1)McHenry L:Ethical issues in psychopharmacology. Journal of Medical Ethics 32:405-410, 2006
2)Greene JD, Sommerville RB, Nystrom LE, et al:An fMRI investigation of emotional engagement in moral judgment. Science 293:2105-2108, 2001
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10)植原亮:薬で頭をよくする社会—スマートドラッグにみる自由と公平性,そして人間性.信原幸弘,原塑編著:脳神経倫理学の展望.勁草書房,pp173-200, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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