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文献詳細

雑誌文献

精神医学63巻12号

2021年12月発行

文献概要

短報

青年期前期に解離を呈した自閉症スペクトラム障害男子の症例

著者: 田宮聡12 池尻直人3 町野彰彦4

所属機関: 1呉みどりヶ丘病院 2姫路市総合福祉通園センター児童精神科 3大慈会三原病院 4国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター精神科

ページ範囲:P.1857 - P.1861

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抄録 幼児期から周期性嘔吐症を呈し,青年期前期に至って解離を発症した自閉症スペクトラム障害男子例を報告した。過剰同調性,感覚過敏といった解離準備状態を持ちあわせていた患児は,小学校卒業までは過適応状態であった。しかし,家族をはじめとする周囲への反発が強まる青年期前期に,より高まった陰性感情が解離を通じて表現された。この解離は,年齢相応の陰性感情の言語化が可能になって改善した。児童青年精神医学臨床においては,症状の意味を生来の特性と発達過程の中で理解することが重要である。

参考文献

1)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth ed.(DSM-5). American Psychiatric Publishing, Washington D.C., 2013(日本精神神経学会日本語版用語監修,髙橋三郎,大野裕監訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014)
2)柴山雅俊:現代社会と解離の病理.柴山雅俊編:解離の病理—自己・世界・時代.岩崎学術出版社,pp163-192, 2012
3)広沢正孝:高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群)と解離.柴山雅俊編:解離の病理—自己・世界・時代.岩崎学術出版社,pp51-75, 2012
4)Sadock BJ, Sadock VA:Kaplan & Sadock's Synopsis of Psychiatry Behavioral Science/Clinical Psychiatry. 11th ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2001(井上令一監修,四宮滋子,田宮聡監訳:カプラン臨床精神医学ハンドブック第3版—DSM-5診断基準の臨床への展開.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2016)
5)是木明宏:解離の診断の意義と留意点.精神経誌 113:897-905, 2011
6)吉川徹,金田昌子:広汎性発達障害と解離性障害.児童青年精神医学とその近隣領域 52:178-185, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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