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特集 いじめと精神医学
学校におけるいじめ対応
著者: 野村武司12
所属機関: 1東京経済大学現代法学部 2獨協地域子ども法律事務所
ページ範囲:P.209 - P.217
文献購入ページに移動抄録 いじめは,行った側が軽く考える一方で,受けた側が深く傷ついているなど意識に大きなギャップがあるのが特徴である。それゆえ,いじめはどこにでも起こる。いじめを早期に発見するには,受けた側の傷つきにできるだけ早くかつ敏感に気付く必要があるが,社会通念として使用されている「いじめ」という用語の影響により,その判断において無意識に行為に目がいき,かつ判断が抑制的になる傾向がある(行為主義)。いじめを早期に発見するためには,「傷つき=心身の苦痛」を尺度(アンテナ)として持つことをはっきりと意識すべきで,子どもが傷つきを表現しない現状も踏まえると,アンテナの精度を上げる取組みとともに,組織的に複数の目をもって対応する必要がある。学校現場では,生活指導組織がいじめ防止対策組織を兼ねることが多いが,行為主義を本質としている生活指導による対応には問題がある。また,いじめの対処においても意識のギャップに留意して対応することが重要である。
参考文献
1)日本弁護士連合会子どもの権利委員会編:子どものいじめ問題ハンドブック—発見・対応から予防まで.明石書店,p20,2015
2)国際子ども権利センター・甲斐田万智子編:世界中の子どもの権利を守る30の方法—だれひとり置きざりにしない! 合同出版,p46,2019
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