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特集 いじめと精神医学
いじめ被害を受けた児童思春期の子どもへのケア
著者: 八木淳子12
所属機関: 1岩手医科大学医学部神経精神科学講座 2いわてこどもケアセンター
ページ範囲:P.219 - P.227
文献購入ページに移動抄録 いじめは,強者が弱者を一方的に支配する不均衡な構造を持ち,被害者の心身を深く傷つけ,その影響は生涯にわたり続くこともある。いじめが被害者にもたらすさまざまな影響を理解し,トラウマインフォームドの視点でいじめの早期発見と被害児の保護,適切なケアと予防対策に取り組み,社会総がかりでいじめ問題に向き合うことが求められる。被害者のケアにおいては,いじめの構造と被害者の心理行動特性を理解し,トラウマ反応に対する適切な働きかけを行って,被害者の再トラウマ化を防ぐことが肝要である。保護された環境のもとで,心理教育や自己対処スキルの獲得によって被害者が自己効力感を取り戻し,否定的自己観や非機能的認知が修正され,心身の健康を取り戻していけるようなケアが展開されることが望まれる。
参考文献
1)野坂祐子:トラウマインフォームドケア—問題行動を捉えなおす援助の視点.日本評論社,2019
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