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文献概要
特集 サイコーシスとは何か—概念,病態生理,診断・治療における意義
特集にあたって
著者: 鈴木道雄1
所属機関: 1富山大学学術研究部医学系神経精神医学講座
ページ範囲:P.283 - P.283
文献購入ページに移動 従来,サイコーシス(psychosis)という用語は精神病と訳され,神経症(neurosis)の対立的概念として,より重度の病態水準にある精神疾患を意味するものであった。しかし,近年ではサイコーシスは妄想,幻覚,思考障害などから構成される症候群を指し,従来の精神病とは異なる意味に用いられている。サイコーシスは,特にその初回の発現(初回エピソードサイコーシス)においては,診断特異的なものではなく,多くの診断転帰を取り得る状態である。また,早期介入研究により,いわゆるat-risk mental state(ARMS)の概念が出現し,軽度で閾値下とも言えるサイコーシスが注目されるようになった。さらに,軽度のサイコーシス様症状は,精神疾患とは診断されない一般人口においても,少なからぬ頻度で認められることが知られるようになった。このように,サイコーシスはスペクトラムとして捉えられ,また統合失調症に限定されない疾患(診断)横断的な症状として認識されるようになったが,サイコーシスに関するさまざまな用語や概念は未整理の状態である。サイコーシスを構成するそれぞれの症状(妄想,幻覚,思考障害など)の出現機序や病態生理の解明により,サイコーシスに関するより正しい理解が可能になると考えられる。
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