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書評
—青木省三,村上伸治,鷲田健二 編—大人のトラウマを診るということ—こころの病の背景にある傷みに気づく フリーアクセス
著者: 伊藤絵美1
所属機関: 1洗足ストレスコーピング・サポートオフィス
ページ範囲:P.504 - P.504
ところでそのような複雑性PTSDのシンポジウムでは,スキーマ療法以外は,トラウマ処理を目的とするさまざまな技法が紹介されることがほとんどである。それはたとえば,EMDR,PE,STAIR/NST,CPT,ホログラフィトーク,USPT,BSP,BCTといったものである(ググってください!)。同じ壇上でプレゼンしながら,これらの技法に筆者は圧倒されてしまう。なぜなら技法の内容も紹介される事例も実に華々しいからである。評者が提示するスキーマ療法の事例はだいたい年単位(3年や5年は当たり前)であるのに比べ,他の華々しい技法はわずか数セッションでトラウマ処理がなされ,クライアントが回復する。スキーマ療法だけ地味で地道で時間がかかり,なんだか評者は自分が詐欺師であるように感じてしまうのだ。とはいえ一方で,どう振り返っても,トラウマを持つ人とのセラピーは,どうしたって時間がかかるし(そもそもトラウマを扱えるようになるまでに時間がかかる),安心安全なかかわりや場の中で薄皮を一枚ずつ剥ぐように少しずつ進めていくしかない,という実感しかない。なのできっと華々しい技法や事例を提示する方々も,トラウマを扱うために,地味で地道な何かをしているに違いないのだ,と考えるようになり,むしろその「地味で地道な何か」を知りたい,と思うようになった。
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