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特集 自殺の現状と予防対策—COVID-19の影響も含めて
文献概要
抄録 コロナ禍の影響もあってか,若者の自殺者が急増している。自殺という行為を選択する過程において,「ウェルテル効果」など,マス・メディアの影響を指摘する声は古くからあった。ただ,マス・コミュニケーション過程において,受け手がどのようにメディア・メッセージを受容し,その影響を受けるかについては,マス・コミュニケーションの効果研究として,多くの知見,研究成果が示されているとともに,メディア環境の変化とそれに伴う,メディア利用行動の変化を踏まえた上で議論すべきであろう。
本論考では,「皮下注射モデル」「限界効果モデル」「強力効果モデル」といったマス・コミュニケーションの効果研究の蓄積を踏まえた上で,現代の日本社会において,10代,20代の若者の自殺が急増することの背景を考える。特に2020年5月に起こったリアリティショーとされるテレビ番組「テラスハウス」の出演者がSNS上での誹謗中傷を苦にして自殺に至ったとされる事件を踏まえ,ネット環境への依存度を強める現代社会においては,マス・メディアに求められてきたメディア・メッセージへの自己規制が効かないネット上での誹謗中傷を含む書き込み,情報が,若者たちを直撃している状況にある。
若者の自殺防止策は,そのようなメディア環境の変化を踏まえた自殺に至るまでの実態のデータ収集とその総合的な分析を進めることで,現代日本社会が抱える重要な問題として対策を図るときにきている。
本論考では,「皮下注射モデル」「限界効果モデル」「強力効果モデル」といったマス・コミュニケーションの効果研究の蓄積を踏まえた上で,現代の日本社会において,10代,20代の若者の自殺が急増することの背景を考える。特に2020年5月に起こったリアリティショーとされるテレビ番組「テラスハウス」の出演者がSNS上での誹謗中傷を苦にして自殺に至ったとされる事件を踏まえ,ネット環境への依存度を強める現代社会においては,マス・メディアに求められてきたメディア・メッセージへの自己規制が効かないネット上での誹謗中傷を含む書き込み,情報が,若者たちを直撃している状況にある。
若者の自殺防止策は,そのようなメディア環境の変化を踏まえた自殺に至るまでの実態のデータ収集とその総合的な分析を進めることで,現代日本社会が抱える重要な問題として対策を図るときにきている。
参考文献
1)World Health Organization(WHO):Preventing suicide:a resource for filmmakers and others working on stage and screen. Geneve, 2019(自殺総合対策推進センター訳:自殺対策を推進するために映画制作者と舞台・映像関係者に知ってもらいたい基礎知識.2020) https://jssc.ncnp.go.jp/file/pdf/JSSC-WHO-MSD-MER-1904-jpn.pdf(2021年6月1日閲覧)
2)Merton RK:Mass Persuasion:The Social Psychology of a War Bond Drive. Harper, New York, 1946(柳井道夫訳:大衆説得—マス・コミュニケイションの社会心理学.桜楓社,1970)
3)Lazarsfeld PF, Berelson B, Gaudet H:The People's Choice:How the Voter Makes Up His Mind in a Presidential Campaign. Duell, Sloan & Pearce, New York, 1944(時野谷浩訳:ピープルズチョイス.葦書房,1987)
4)McCombs ME, Shaw DL:The evolution of agenda-setting research:twenty-five years in the marketplace of ideas. J Commun 43:58-67, 1993
5)NHK:NHKスペシャル—死を選ばせないため.NHK総合テレビ,2021年6月13日
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