icon fsr

雑誌詳細

文献概要

特集 自殺の現状と予防対策—COVID-19の影響も含めて

医療安全の観点からの自殺予防

著者: 松村由美1

所属機関: 1京都大学医学部附属病院医療安全管理部

ページ範囲:P.1091 - P.1098

抄録 日本では,医療機関における患者の自殺事故の現状に関するデータが報告・収集され,自殺対策の有効性評価の指標が構築されつつある。ところが自殺事故の発生件数が減ることはなく,患者の自殺を減らす取り組みが医療機関には求められている。そこで,方策の1つとして,医療安全管理部門を活用した患者の自殺を減らす取り組みを紹介する。
 自殺,自殺未遂をインシデント報告対象と定めることによりリスクを認知することができる。また,医療法で求められている職員向けの医療安全の研修において,自殺予防対策を取り上げることも効果的である。さらに発展的な方法として,精神科リエゾンチームの設置や公認心理師の雇用が挙げられる。その場合も,専門家だけが対応するのではなく,院内での横の連携が重要である。医療安全管理部門は,患者安全を目的として活動しているので,患者安全のための新たな組織やシステム作りにかかわることができる。

参考文献

1)厚生労働省:令和2年版自殺対策白書. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsuhakusyo2020.html(2021年4月1日閲覧)
2)河北博文:財団法人日本医療機能評価機構.医学のあゆみ 188:992-997, 1999
3)日本医療機能評価機構認定病院患者安全推進協議会:病院内の自殺対策のすすめ方 第Ⅰ部.患者安全推進ジャーナル 40(別冊):5-58, 2011
4)日本医療機能評価機構認定病院患者安全推進協議会:病院内の入院患者の自殺事故に関する調査.患者安全推進ジャーナル 45:83-91, 2016
5)Carlisle A, Blanchard M:Introduction to Quality Improvement.In:Fondahn E, De Fer TM, Lane M, et al, ed. The Washington Manual of Patient Safety and Quality Improvement. Wolters Kluwer Health, Philadelphia, 2016(加藤良太朗,本田仁監訳:ワシントンマニュアル 患者安全と医療の質改善.メディカル・サイエンス・インターナショナル,pp13-27, 2018)
6)内閣府自殺対策推進室:ゲートキーパー養成研修用テキスト(第3版). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000128774.html(2021年4月1日閲覧)
7)河西千秋,平安良雄監訳:自殺予防 カウンセラーのための手引き(日本語版初版). https://www.who.int/mental_health/resources/counsellors_japanese.pdf(2021年4月1日閲覧)
8)白井由紀,藤森麻衣子,内富庸介:Ⅱ.緩和ケアの教育と研修 4.SHAREプロジェクト:コミュニケーション・スキル・トレーニング(CST)プロジェクト.志真泰夫,恒藤暁,松島たつ子,他:ホスピス・緩和ケア白書2009.(財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団,pp31-37, 2009
9)国立がん研究センター編:がん医療における自殺対策の手引き(2019年版).2020 https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/icsppc/020/ganiryou.pdf(2021年4月1日閲覧)
10)松村由美:医療安全の視点からの患者の自殺予防.自殺総合政策研究 3:2021(印刷中)

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?