文献詳細
特集 認知症診療における精神科医の役割を再考する
文献概要
抄録 Person-centered careの中で「BPSDはその人の心の表現であり,その意味をその人の立場で理解して対応する視点を持つこと」の重要性が指摘されている。認知症患者は,「家族に迷惑をかけるかもしれない」「将来何も分からなくなるのではないか」といった不安や怖れ,できなくなった自分自身への腹立ち,認知症になることへの憤りやあきらめ,周囲の人に認知症を知られたくないといった恥の感情など,さまざまな心情を抱いて暮らしている。認知症患者のBPSDの背景には,このような“患者の想い”があることを理解し対応することが重要である。「患者の声に真摯に耳を傾ける」「病気を診るとともに,病気の人を診る」という精神科医の診療スタイルが,BPSD治療には必要である。
参考文献
1)Kitwood T著,高橋誠一訳:認知症のパーソンセンタードケア.筒井書房,2005
2)Kazui H, Yoshiyama K, Kanemoto H, et al:Differences of behavioral and psychological symptoms of dementia in disease severity in four major dementias. PLoS One 11:e0161092, 2016
3)橋本衛,池田学:認知症患者における嫉妬妄想の神経基盤.神経心理学 29:266-277, 2013
4)Cobb J:Morbid jealousy. Br J Hosp Med 21:511-518, 1979
5)Seeman MV:Pathological jealousy. Psychiatry 42:351-358, 1979
6)Hashimoto M, Sakamoto S, Ikeda M:Clinical features of delusional jealousy in elderly patients with dementia. J Clin Psychiatry 76:691-695, 2015
7)濱田秀伯:ルサンチマンと妄想形成.ラクリモーサー濱田秀伯著作選集,群馬病院出版会,pp91-98, 2015
8)橋本衛:認知症患者の妄想の発現に関わる要因について.Dementia Japan 33:215-223, 2019
掲載誌情報