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文献詳細

雑誌文献

精神医学63巻8号

2021年08月発行

文献概要

研究と報告

統合失調症患者における対称性選好と精神症状との関連について

著者: 岩滿優美1 小林史乃2 川杉桂太3 竹村和久3 西澤さくら4 塚本康之4 延藤麻子4 小平明子4 轟純一4 轟慶子4

所属機関: 1北里大学大学院医療系研究科医療心理学 2東京都健康長寿医療センター 3早稲田大学文学学術院 4鶴賀病院

ページ範囲:P.1269 - P.1278

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抄録 統合失調症患者の描画特徴の1つに,対称性がある。そこで本研究では,さまざまな比率で作成された7種類の図形を呈示し,最もきれいだと思われる任意の位置に,1本の垂直線あるいは水平線を描くという図形分割課題を用いて,統合失調症患者の対称性選好について調べた。その結果,さまざまな比率で作成された図形,分割線の方向など,いずれの点から検討しても,統合失調症患者は健常者と比較して対称性を選好する頻度が高いことが明らかになった。統合失調症患者の対称性選好には陰性症状や陽性症状と正の関連が,一方,総合精神病理尺度とは負の関連が認められた。今後,総合精神病理得点について,より詳細に検討を加えていきたい。

参考文献

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2)横田正夫:バウム・テスト—分裂病スペクトラムに対応する歪んだ描画表現.精神科治療学 7:249-257, 1992
3)横田正夫,伊藤菜穂子,清水修:精神分裂病患者の彩色樹木画の検討(第2報).精神医学 41:469-476, 1999
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6)川杉桂太,竹村和久,岩滿優美,他:ウェーブレット変換,特異値分解,フーリエ変換を用いた樹木画の画像解析.心理学研究 90:284-293, 2019
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19)余語優美:分割図形の印象と選好—好まれやすい分割比率の検討.同志社大学文学研究科博士論文(心理学),2000
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21)山本哲也:2うつ病の生理・神経心理学的理解.坂本真二編:心理学からみたうつ病.朝倉書店,pp11-24, 2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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