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特集 産業精神保健の現状と課題
産業精神保健が取り組むべき基礎的課題について
著者: 浜口伝博12
所属機関: 1産業医科大学産業生態科学研究所作業関連疾患予防学 2ファームアンドブレイン有限会社
ページ範囲:P.1311 - P.1319
文献購入ページに移動抄録 産業の変化は職場のサービス化とIT化を推し進め,労働者にさらなる処理スピードと情報処理負荷を求めている。これらは労働者のストレスを高め健康障害となって現れており,精神障害の労災申請件数も1次関数的に増加している。過重労働対策として労働時間の上限規制が施行されてはいるが,その効果の兆しはまだみられない。産業精神保健活動は,上流でのストレス対策と下流での事例対策との同時進行で取り組む必要があり,上流はストレスチェック制度を応用しながら組織的な取り組みとし,下流の事例対策としては,社員と専門職の面談しやすい社風づくりを進めるべきであろう。労働安全衛生法改正を機に産業医の権限強化と産業保健機能強化が進められているが,社会が期待する産業保健成果をどこまで出せるかは現場の専門家に委ねられている。産業精神保健活動も,同じく労働者の安全と健康を確保する事業者活動として総合的に進める必要がある。
参考文献
1)厚生労働省:仕事や職業生活における不安やストレスに関する事項.平成30年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況.p18, 2019
2)独立行政法人労働政策研究・研修機構:産業別就業者数の推移(第一次〜第三次産業)1951年〜2019年. https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0204.html(2021年6月1日閲覧)
3)日本医師会産業保健委員会:産業保健委員会答申.2016年3月
4)全国労働安全衛生センター連絡会議:脳・心臓疾患及び精神障害の労災請求・認定件数. https://joshrc.net/archives/3868(2021年6月1日閲覧)
5)神ノ田昌博:産業医の助言・指導・勧告をめぐって〜行政の立場から.産業医学ジャーナル 42:7-11, 2019
6)神ノ田昌博:産業医に期待される役割.日本医師会雑誌 148:1271-1273, 2019
7)浜口伝博:職場のメンタルヘルス問題にどのように対処すべきか.日本臨牀 75:1590-1595, 2017
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