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文献詳細

雑誌文献

精神医学64巻10号

2022年10月発行

文献概要

特集 精神・神経疾患に併存する過眠の背景病態と治療マネジメント

ナルコレプシーにおける過眠の病態基盤

著者: 本多真1

所属機関: 1公益財団法人東京都医学総合研究所精神行動医学研究分野睡眠プロジェクト

ページ範囲:P.1319 - P.1326

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抄録 ナルコレプシーは睡眠覚醒中枢の機能異常に起因する中枢性過眠症の代表で,情動脱力発作を伴う典型例(ナルコレプシータイプ1:NT1)と伴わない亜型(ナルコレプシータイプ2:NT2)に分類される。NT1の病態基盤は覚醒性オレキシン神経の変性消失とされる。NT1の眠気は通常あり得ない状況下での居眠り反復という特徴をもつ。これは覚醒維持の障害に起因し,睡眠覚醒の位相が分断化を反映する。NT1に特徴的な情動脱力発作は,レム睡眠関連症状の1つであり,レム睡眠における筋弛緩機序が覚醒状態でも生じてしまう症状とされる。睡眠覚醒切り替えがオレキシン神経機能低下により不安定化し,覚醒とレム睡眠の中間的状態が生じやすくなることが病態基盤となる。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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