文献詳細
特集 ひきこもりの理解と支援
文献概要
抄録 精神医学において,ひきこもり問題に関する議論が活発化したのは2000年前後であり,1997年に「臨床精神医学」誌,2003年に「精神医学」誌において特集が組まれた。近年においては,「公衆衛生」誌や「こころの科学」誌などで特集が組まれている。
本稿では,まず学術誌の2000年前後の特集と近年の特集とを比較し,ひきこもり問題に対する問題認識や論点の変化について検討した。近年の特徴は,ひきこもりが,青年期に限らず,すべての年代にわたる課題として認識されてきたこと,専門的な相談機関と同時にピア支援活動が活発になっていること,必ずしも社会参加や就労を目標としない治療・支援が提唱されていることなどであった。
さらに本稿では,1960年代から精神保健福祉活動において提唱されてきた事例性概念を振り返り,いわゆる8050問題に求められるような多領域にわたるネットワーク支援における共通言語として,事例性概念が今なお有用であることを示した。
本稿では,まず学術誌の2000年前後の特集と近年の特集とを比較し,ひきこもり問題に対する問題認識や論点の変化について検討した。近年の特徴は,ひきこもりが,青年期に限らず,すべての年代にわたる課題として認識されてきたこと,専門的な相談機関と同時にピア支援活動が活発になっていること,必ずしも社会参加や就労を目標としない治療・支援が提唱されていることなどであった。
さらに本稿では,1960年代から精神保健福祉活動において提唱されてきた事例性概念を振り返り,いわゆる8050問題に求められるような多領域にわたるネットワーク支援における共通言語として,事例性概念が今なお有用であることを示した。
参考文献
1)近藤直司:青年期のひきこもりについて.精神経誌 103:556-565, 2001
2)太田順一郎:支援の枠組みに関するこの10年の変化.こころの科学 212:29-34, 2020
3)中尾智博:ためこみ症と社会的孤立—ゴミ屋敷問題の処方箋.公衆衛生 85:668-673, 2021
4)辻本哲士:ひきこもりに対する地域支援.公衆衛生 85:674-679, 2021
5)原田豊:地域精神保健の現場からみたひきこもりの現状と課題—8050問題の本質を考える.こころの科学 212:35-39, 2020
6)近藤直司,広沢昇:暴力を伴うひきこもりケースに対する治療・支援.精神科治療学 33:953-958, 2018
7)金谷尚佳,井川大輔:ひきこもり地域支援センターにおける当事者のピア活動.こころの科学 212:88-92, 2020
8)後藤美穂:ひきこもり女性への働き掛け方と居場所づくり—民間支援団体の立場から.公衆衛生 85:680-685, 2021
9)境泉洋:長期化するひきこもり本人と共に生きる家族の相談支援.公衆衛生 85:655-660, 2021
10)近藤直司:不登校・ひきこもりケースに貢献するために精神科医に必要なこと—事例性概念再考—.精神科治療学 34:361-366, 2019
11)近藤直司:青年のひきこもり・その後.岩崎学術出版社,2017
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