icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学64巻11号

2022年11月発行

文献概要

特集 ひきこもりの理解と支援

発達障害とひきこもりに関連する社会的要因の検討

著者: 平生尚之1

所属機関: 1ひょうご発達障害者支援センタークローバー加西ブランチ

ページ範囲:P.1451 - P.1456

文献購入ページに移動
抄録 発達障害とひきこもりの関連について,筆者の所属する発達障害者支援センターの2005〜2022年現在までの18年間の相談70例を対象とし後方視的に調査した。その結果,介入前後を含め診断のある42例のうち38例で自閉症スペクトラム障害特性が認められ,相談傾向としては,「受け身群」46例と「暴力行為リスク群」24例とに分類された。前者においては,地域支援機関でのエビデンスに基づく介入や連携が求められ,後者では,認知行動療法に基づく介入により行動問題が低減もしくは消失した18例があったものの,危機介入が必要な事例も6例あった。危機介入時には,医療機関と保健所,警察,地域支援機関などの法的根拠に基づく連携が必須であり体制整備が急務であることが示唆された。
 また,発達障害特性の発見と支援の遅れの社会的要因に対し,発達障害の検査の実施,通常級での予防的教育,自治体の体制整備,予防的研究について言及した。

参考文献

1)内閣府政策統括官(共生社会政策担当):若者の生活に関する調査報告書. https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/h27/pdf-index.html[2022年8月21日閲覧]
2)内閣府政策統括官(共生社会政策担当):生活状況に関する調査. https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/life/h30/pdf-index.html[2022年8月21日閲覧]
3)齊藤万比古:「思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究」平成19年度〜21年度総合研究報告書厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業,2010
4)Kondo N, Sakai M, Kuroda Y, et al:General condition of hikikomori (prolonged social withdrawal) in Japan:Psychiatric diagnosis and outcome in the mental health welfare center. Intl J Soc Psychiatry 59:79-86, 2011
5)発達障害支援のための評価研究会(編著):PARS-TR親面接式自閉スペクトラム症評定尺度テキスト改訂版.スペクトラム出版社,2013
6)近藤直司:社会的ひきこもりと自閉症スペクトラム障害.自閉症スペクトラム研究 10:37-45, 2013
7)山本彩:危機介入.臨床心理学 20:733-737, 2020
8)平生尚之,稲葉綾乃,井澤信三:自閉症スペクトラム障害特性を背景とするひきこもり状態にある人の家族支援—発達障害者支援センターにおけるCRAFT適用の検討—.認知行動療法研究 44:147-158, 2018
9)平野郁子:自閉症スペクトラム者が自己理解することの当事者的意義—自己理解支援の課題と展望.北海道大学大学院教育学研究院紀要 132:45-57, 2018
10)Luke L, Clare IC, Howard Ring H, et al:Decision-making difficulties experienced by adults with autism spectrum conditions. Autism 16:612-621, 2012
11)厚生労働省:ひきこもり支援推進事業. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomohi/index.html[2022年8月21日閲覧]

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら