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特集 ひきこもりの理解と支援
文献概要
抄録 不登校とひきこもりには社会性の問題としての共通性があり,互いに密接な関連のある隣接概念であるが,いずれも時代や社会の変化の中で常に変動しており,それを踏まえて慎重に理解する必要がある。ひきこもりはもともと不登校の長期化・遷延化から派生したことから,不登校との連続性が注目されたが,現在では中学校不登校の増加にもかかわらず高校への進学者の増加と登校状況の改善がみられており,不登校からひきこもりへの直接的な移行は減少している。その一方で,学校教育を終了後にひきこもりとして問題が顕在化する例が増えている。学校への登校や就労は,発達段階に応じた標準的な社会参加であり,そこからの逸脱にはメンタルヘルスの問題が潜んでいる可能性はあるが,その本質はトランジションのリスクであり,思春期から成人期にかけての発達課題への支援が重要である。
参考文献
1)稲村博:不登校の研究.新曜社,1994
2)斎藤環:社会的ひきこもり—終わらない思春期.PHP研究所,1998
3)齊藤万比古:不登校の病院内学級中学校卒業後10年間の追跡研究.児童青年精神医学とその近接領域 41:377-399, 2000
4)文部科学省:「不登校に関する実態調査」〜平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書〜(概要版).2014 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1349956.htm[2022年10月1日閲覧]
5)内閣府:若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査).2010 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/pdf/s1.pdf[2022年10月1日閲覧]
6)内閣府:若者の生活に関する調査報告書.2016 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/h27/pdf-index.html[2022年10月1日閲覧]
7)内閣府:生活状況に関する調査(平成30年度).2019 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/life/h30/pdf-index.html[2022年10月1日閲覧]
8)文部科学省:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査.2021 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400304&kikan=00400&tstat=000001112655&result_page=1[2022年10月1日閲覧]
9)日本財団:不登校傾向にある子どもの実態調査.2018 https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/information/2018/20181212-6917.html[2022年10月1日閲覧]
10)文部科学省:令和3年度学校基本調査.2021
11)土岐玲奈:高等学校における〈学習ケア〉の学校臨床学的考察:通信制高校の多様な生徒に対する学習支援と心理支援.福村出版,2019
12)保坂亨:学校を長期欠席する子どもたち:不登校・ネグレクトから学校教育と児童福祉の連携を考える.明石書店,2019
13)小野善郎:児童・思春期精神疾患の治療におけるトランジション.精神科治療学 36:633-638, 2021
14)小野善郎,保坂亨(編):続・移行支援としての高校教育:大人への以降に向けた「学び」のプロセス.福村出版,2016
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