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文献詳細

雑誌文献

精神医学64巻12号

2022年12月発行

文献概要

特集 死別にまつわる心理的苦痛—背景理論からケアおよびマネジメントまで

自死遺族のケア—遺族から臨床精神科医に望むこと

著者: 岡知史1 田中幸子2 齋藤智恵子2

所属機関: 1上智大学総合人間科学部社会福祉学科 2全国自死遺族連絡会

ページ範囲:P.1619 - P.1624

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抄録 全国自死遺族連絡会は,約3千人の自死遺族の交流の場になっているが,そこで蓄積された自死遺族の体験的知識から,臨床精神科医の自死遺族へのサポートあるいは配慮として次の3点を望みたい。第1に死別直後から,遺族には食欲不振,不眠,頭痛などの重い身体症状を含む,生きていくのに困難な状況が続くことがあり,その軽減のための治療を行うことである。第2に,愛する家族を自死で喪った悲しみは,長く続くものであり,それを安易に「病気」と捉えないでほしい。第3に,自死遺族の自助グループとの連携を考えてほしい。自死遺族は,上記の身体症状だけではなく,法的問題,経済的問題などで苦しんでいることがあり,そのときは自助グループとの連携が,遺族の助けになる。アルコール依存症の治療では,精神科医と自助グループの協働が実現している。同様の協力関係を自死遺族の自助グループは求めている。

参考文献

1)岡知史,田中幸子,明英彦:『グリーフケアは要らない』という声が自死遺族にはある.地域保健:41(3):21-25, 2010
2)谷田憲俊:患者・家族の緩和ケアを支援するスピリチュアルケア—初診から悲嘆まで.診断と治療社,p143, 2008
3)田中幸子:シンポジウムb09:精神科医療と自死遺族会との連携:失なわれた命から学ぶ.公益社団法人日本精神神経科診療所協会第27回学術研究会抄録,2022
4)岡知史,Thomasina Borkman:セルフヘルプグループの歴史・概念・理論—国際的な視野から.OTジャーナル 34:718-722, 2000(「体験的知識」について,解説している)
5)高橋祥友:自殺,そして遺された人々.新興医学出版社,2003
6)平山正実:自死遺族を支える.エム・シー・ミューズ,2009
7)上野正彦:自死問題における監察制度と警察の役割.現代のエスプリ 501:72-73, 2009
8)大倉高志:自殺発生直後の遺族支援に関する文献検討—警察,死体検案医,解剖担当者を中心に.評論・社会科学 99:97-135, 2012
9)中島聡美:自死遺族の複雑性悲嘆に対する心理的ケア・治療.精神科 25:57-63, 2014
10)清水加奈子,小林聡幸:身体症状として表現された自殺者遺族の複雑性悲嘆—「仮面複雑性悲嘆」の治療について.臨床精神医学 45:349-356, 2016
11)谷田憲俊:患者・家族の緩和ケアを支援するスピリチュアルケア—初診から悲嘆まで,診断と治療社,p157, 2008
12)Allen Frances(訳:青木創・大野裕):「正常」を救え:精神医学を混乱させるDSM-5への警告.講談社,p290, 2013
13)全国自死遺族連絡会,自死遺族等の権利保護研究会:自死遺族が直面する法律問題—自死遺族支援のための手引. https://www.zenziren.com/tebiki1/
14)辻本士郎:外来治療における自助グループなどとの連携.アルコーリズム:アルコール依存症と関連問題 7(1):20, 2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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