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文献詳細

雑誌文献

精神医学64巻12号

2022年12月発行

文献概要

特集 死別にまつわる心理的苦痛—背景理論からケアおよびマネジメントまで

統合失調症患者は,死別をどのように体験するか?

著者: 岡島美朗1

所属機関: 1自治医科大学附属さいたま医療センターメンタルヘルス科

ページ範囲:P.1631 - P.1636

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抄録 すでに発症している統合失調症患者の死別に関する精神医学的・心理学的知見は少ない。そこで,死別を対象喪失と捉える一般理論をもとに,統合失調症患者の死別体験について症例を提示して検討した。まず,統合失調症患者は発症以来さまざまな喪失にさらされており,そのうえで死別という喪失を経験していることを考慮する必要がある。死別に際して,統合失調症患者が激しい感情的反応を示すことは少なく,むしろより的確に状況を認識し,現実的にふるまうことがある。その一方で,喪失に関連して幻聴などの精神病症状が生じることがあるが,主体が喪失という事態を自らの世界に組み込む営みと理解できる場合がある。また,高齢化が進む中,高齢の家族に庇護されていた患者が,家族との死別によって生活が破綻する場合があり,その対策も今後の重要な課題である。

参考文献

1)岡田明子,小林ひとみ,中村三和子,他:我が子との死別を体験した母親のグリーフワーク.精神科看護 31(4):56-61,2004
2)Young M, Benjamin B, Wallis C:The Mortality of widowers. Lancet 2:454-456, 1963
3)Rees WD, Lutkins SG:Mortality of bereavement. Br Med J 4:13-16, 1967
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6)小此木啓吾:対象喪失—悲しむということ.中央公論社,1979
7)Wittmann D, Keshavan M:Grief and mourning in schizophrenia. Psychiatry 70:154-166, 2007
8)Lewis L:Mourning, insight and reduction of suicide risk in schizophrenia. Bull Menninger Clin 68:231-244, 2004
9)清水加奈子,小林聡幸:喪を巡る病と「ある」(l'《il y a》)—父親の自死後,多彩な精神症状を呈した若年女性の一例から.臨床精神病理 38:291-303, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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