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試論
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抄録 メランコリー親和型うつ病について,臨床現場で確認される頻度が減少しつつあると報告されて久しい。ただ一方では,DSM-5に「メランコリアの特徴」の附則1)が加えられたことを踏まえて,同型うつ病が時代性や地域性を越えて一定の普遍性を有する病型として再評価される可能性も議論されている2)。本論考においては,定年退職後の再任用制度という新規の労働環境にあってうつ病を初発した60代の男性症例を提示し,同型うつ病の退潮という昨今の観測に疑問を提起する。うつ病の類型診断にあたっては,過度に道徳化された病前性格論から離れて,発症状況論に基づく本来の診断が試みられるべきと考える。
参考文献
1)American Psychiatric Association:Diagnostic and Stastical Manual of Mental Disorders-Fifth edition, American Psychiatry Association, Arlington, VA, 2013〔髙橋三郎,大野裕(監訳):DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル,医学書院,p184, 2014〕
2)大前晋:メランコリー親和型うつ病.精神科治療学 25(増刊号:今日の精神科治療ガイドライン):135-137, 2010
3)岡崎翼:職場結合型うつ病.精神科治療学 27(増刊号:気分障害の治療ガイドライン):149-159, 2012
4)Schneider K:Klinische Psychopathologie 15. Auflage, Georg Thieme Verlag KG, Stuttgart, 1958[針間博彦(訳):新版臨床精神病理学,文光堂,pp78-79, 2007]
5)Jaspers K:Allgemeine Psychopathologie, Springer-Verlag, Berlin, 1913[西丸四方(訳):精神病理学原論.みすず書房,p233, 1971]
6)Tellenbach H:Melancholie, Springer-Verlag, Berlin, 1961[木村敏(訳):メランコリー.みすず書房,pp142-143, 1978]
7)樽見伸:現代社会が生む“ディスチミア親和型”—臨床の記述と「義」.星和書店,pp197-211, 2006
8)加藤隆弘:若年者の抑うつ症—「現代抑うつ症候群」の提唱,講座「精神疾患の臨床」1—気分症群.中山書店,pp97-109, 2020
9)Tellenbach H:Melancholie, Springer-Verlag, Berlin, 1961[木村敏(訳):メランコリー,みすず書房,p297, 1978]
10)Tellenbach H:Melancholie, Springer-Verlag, Berlin, 1961[木村敏(訳):メランコリー,みすず書房,p154, 1978]
11)Tellenbach H:Melancholie, Springer-Verlag, Berlin, 1961[木村敏(訳):メランコリー,みすず書房,p169, 1978]
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