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雑誌目次

論文

精神医学64巻5号

2022年05月発行

雑誌目次

増大号特集 精神科診療のピットフォール

特集にあたって

著者: 明智龍男

ページ範囲:P.497 - P.497

 本増大号は、「精神医学」誌の3冊目の増大号です。ご記憶の方もおられるかもしれませんが、1冊目は「精神科診療のエビデンス一国内外の重要ガイドライン解説」、2冊目は「精神科クリニカル・パール一先達に学ぶ」でした。
 今回の3冊目の増大号の企画を編集委員会で話し合っている際に、言い方は悪いのですが、買って得をしたなと思える書籍、要するに多くの皆さんに手にとっていただき5,000円以上払ってもよかったと思っていただける本にしたいですね、という話になりました。そういった話し合いの中で、今回の増大号の案が出てきました。したがって、本増大号はあまり精神科関係の雑誌では類をみない、なかなかチャレンジングな内容に仕上がっています。

総論

支持的な面接

著者: 青木省三

ページ範囲:P.500 - P.505

ピットフォール
・支持のタイミングを外してしまう
・診察室がぴりぴり,はらはらした雰囲気になってしまう
・支持が傷口を開いてしまうことがある
・治療者の考える「支持」と患者の感じとる「支持」は同じと考えてしまう
・「分かりますよ」と言ってしまう
・別れ際に注意がそれてしまう
・自身の診療に自信を失い,患者の言動を敏感に被害的に受け止めてしまう

診断

著者: 村井俊哉

ページ範囲:P.506 - P.510

ピットフォール
・診断を単なる分類や,技能と認識している
・診断の意義を説明できない
・診断名は専門用語であることへの認識不足
・診断名をそれ単独で意義があるものとして考えてしまう
・意図せず精神疾患のスティグマ形成に加担してしまう
・診断名を鵜呑みにしてしまう
・自分の専門領域の診断名だけを絶対と思ってしまう
・診断はコミットメントであるということへの認識不足

検査

著者: 岡本泰昌

ページ範囲:P.511 - P.516

ピットフォール
・検査前確率を高める面接や診察を欠いてしまう
・検査の特徴や限界を理解せず,目的に合わない検査を選択してしまう
・生理的変動や検査に影響を与える要因を見落としてしまう
・受け手の理解度を考慮せず一方的に検査結果を伝えてしまう

薬物療法—多剤併用に注目して

著者: 仙波純一

ページ範囲:P.517 - P.521

ピットフォール
・多剤併用になる仕組みの理解不足
・最初から複数の薬を処方してしまう
・ベンゾジアゼピン系薬物の併用や頓用薬の処方に対する注意不足
・効果のないときに,併用を続けてしまう
・いたずらに再発を恐れてしまう

力動的・分析的精神療法

著者: 衣笠隆幸

ページ範囲:P.522 - P.526

ピットフォール
・日本の劣悪な精神科診療条件の基礎を作った精神科特例法(1957)の影響を認識しない
・紹介患者の分析的精神療法の依頼があったときにそのまま引き受けてしまう
・診断面接を手抜きしてしまう
・治療者自身が分析的精神療法の経験をどの程度積んでいるかを考慮しない
・環境条件を考慮に入れない
・治療者の引き継ぎの重要性に注意を払わない
・患者から症状の改善を訴え,治療者がそのまま治療の終了を了承してしまう

認知行動療法

著者: 清水栄司

ページ範囲:P.527 - P.531

ピットフォール
・「患者を変化させる」ことに焦点化しすぎて治療者側が空回りしてしまう
・認知行動療法は,「過去」は取り扱わないと考えてしまう
・曝露療法と言って,無理強いしてしまう
・低強度と高強度の認知行動療法を区別せず提供してしまう

電気けいれん療法(ECT)

著者: 野田隆政

ページ範囲:P.532 - P.536

ピットフォール
・ECTの適応を既応歴,合併症の再確認をせずに判断してしまう
・治療抵抗性と安易に考えてしまう
・適切な発作が誘発できたか確認しない
・以前のECT適応判断を今回も引用してしまう
・ECTによって症状が改善した場合,事後に本人から同意取得するのを忘れてしまう
・術前検査で深部静脈血栓症の存在を見落としてしまう
・ECTに適さない薬剤を服用していないかの確認を怠る
・有効なけいれんを誘発できているか確認しない
・けいれんが誘発できない場合ECTをあきらめてしまう
・自信のないことをしてしまう
・ECT導入が決まったことで気を抜いてしまう
・ECTが効かないとすぐに判断してしまう
・維持ECTの出口戦略を考慮しない

精神科救急

著者: 澤潔

ページ範囲:P.537 - P.542

ピットフォール
・「先入観」のまま突っ走ってしまう
・身体合併症を見過ごしてしまう
・「医療対応なのか,司法対応なのか」で焦ってしまう
・速やかな鎮静を図ろうとしてしまいがちである
・自分自身の心身の状態を見過ごしてしまう

自殺予防と自殺企図者への対応

著者: 石橋竜太朗 ,   石井貴男 ,   河西千秋

ページ範囲:P.543 - P.550

ピットフォール
・自殺プロセスを理解していない
・自殺リスク評価を単純化してしまう
・致死性・手段にとらわれてしまう
・自殺企図者への初期対応を誤ってしまう
・「ふわっとした」評価で自殺再企図を抑止しようとする
・誤ったゴール設定をしてしまう

精神科リハビリテーション

著者: 佐藤さやか

ページ範囲:P.551 - P.555

ピットフォール
・精神科リハビリテーション=支援技法と誤解してしまう
・「リカバリー」の誤用や乱用に気付かない
・集団に比べて個別支援がおろそかになってしまう

就労支援や結婚の場合

著者: 池淵恵美

ページ範囲:P.556 - P.560

ピットフォール
・就労支援を就労支援機関に丸投げしてしまう
・幻聴が出現してくるなどの精神症状の悪化に医学モデルで対応し,休養させて薬物を増量してしまう
・次のステップを目指したくなる順調なときに思わぬ再発が起こってしまう
・「就職や結婚の話はしっかり病状が落ち着いてから」と伝えたことで,当事者の気持ちが離れてしまう
・結婚の話が出てきたときに,医療スタッフが「専門外だから」,「当事者が決めること」と関与しないことで,結婚後の通院や服薬が難しくなってしまう

コンサルテーション・リエゾンサービス

著者: 和田健

ページ範囲:P.561 - P.566

ピットフォール
・紹介の目的,意図はどこにあるか把握できていない
・カルテを十分に確認せず診察してしまう
・患者の意志,思いを確認せずに診察してしまう
・軽度意識障害を見逃す
・薬物療法の指示,説明が不十分になる
・リエゾンチーム間のコミュニケーションが不足している

サイコオンコロジー・緩和ケア—担がん状態を念頭に置くことの重要性

著者: 明智龍男

ページ範囲:P.567 - P.571

ピットフォール
・他科からの依頼箋の内容をそのまま患者に伝えてしまう
・大部屋の他の患者の前で「精神科の〇〇です」と自己紹介してしまう
・アカシジアを鑑別せずに「いらいら」を純粋な精神症状と考えてしまう
・診断を焦ってしまう
・「否認」を見逃してしまう

病名告知

著者: 岡島美朗

ページ範囲:P.572 - P.577

ピットフォール
・病名をつけることで,適応する努力を妨げてしまう
・病名により,疾病を社会的に認証することがもたらす影響を考慮しない
・病名告知により,患者の体験を否定してしまう
・医療者間で病名が独り歩きしてしまう

家族への対応

著者: 香月富士日

ページ範囲:P.578 - P.582

ピットフォール
・クレームの多い家族の気持ちを想像していない
・良かれと思ってのアドバイス
・ついつい原因探しをしてしまう
・現実(リアリティ)はいくつもある
・家族は患者の人格と病気を混同しやすいことに気付かない

疾患各論 統合失調症

統合失調症(前駆期またはハイリスク状態)

著者: 松本和紀

ページ範囲:P.584 - P.589

ピットフォール
・統合失調症“様”の症状から統合失調症の早期診断を急いでしまう
・うつ・不安・トラウマ—情動系の症状・病態への評価・治療をおろそかにしてしまう
・発達症圏と統合失調症圏との鑑別を白か黒かで判断してしまう
・抗精神病薬を統合失調症/精神症の“発症予防”を目的に処方し続けてしまう
・当事者が支援を求めているのに適切な早期介入ができない

統合失調症(初回エピソード)

著者: 田形弘実 ,   根本隆洋

ページ範囲:P.590 - P.593

ピットフォール
・単身の受診など情報が限られている場合の診断を安易に行ってしまう
・速やかに治療効果を得るため抗精神病薬の増量を急いでしまう
・1回の診察ですべてを解決しようとしてしまう
・家族へのアプローチを軽視してしまう
・エビデンスを妄信してしまう

統合失調症(慢性期)

著者: 松田康裕 ,   岩田和彦

ページ範囲:P.594 - P.598

ピットフォール
・引き継ぎ時の診断をおろそかにしてしまう
・認知症の診断を安易につけてしまう
・減薬を早急にしてしまう
・思ったようにいかず,リカバリー支援をあきらめてしまう

妄想性障害

著者: 針間博彦

ページ範囲:P.599 - P.603

ピットフォール
・妄想という判断を安易に考えてしまう
・delusional(妄想性)とparanoid(猜疑性)を混同してしまう
・除外診断を見過ごしてしまう
・その人の元々のあり方を考慮しないまま治療を始めてしまう
・妄想が妄想であると患者を説得しようとしてしまう

緊張病(カタトニア)

著者: 大久保善朗

ページ範囲:P.604 - P.607

ピットフォール
・緊張病(カタトニア)を統合失調症の一亜型と考えてしまう
・悪性緊張病への移行についてモニタリングが不足している
・安易に抗精神病薬を投与してしまう
・基礎疾患を考慮していない

うつ病

うつ病(急性期)

著者: 堀輝

ページ範囲:P.608 - P.612

ピットフォール
・身体疾患を見逃してしまう
・相手が理解できない言葉で説明してしまう
・曖昧な状況の中で患者に伝えることがぼんやりとしてしまいきちんと伝えられない
・患者の背景をきちんと考えずに治療計画を立ててしまう
・3か月ルールに縛られ過ぎてしまう

うつ病(回復期・維持期)

著者: 北川信樹

ページ範囲:P.613 - P.618

ピットフォール
・元気になったと手放しに喜んでしまう
・症状が遷延・慢性化したときに診断を見直さない
・安易な心因論に偏ってしまう
・目標を元通りの生活や価値観に置いてしまう

いわゆる軽症うつ病

著者: 宮岡等 ,   宮岡佳子

ページ範囲:P.619 - P.623

ピットフォール
・本当にうつ病なのかという検討が不十分になりやすい
・他の精神疾患の鑑別と合併を見過ごしてしまう
・何を基準に軽症と呼んでいるか曖昧なまま治療に当たってしまう
・精神科医の面接能力や知識が不十分である
・抗うつ薬や抗不安薬の副作用をうつ病の増悪と間違える
・強化療法や維持療法についての理解が不十分になりやすい

非定型うつ病

著者: 坂元薫

ページ範囲:P.624 - P.630

ピットフォール
・うつ病が典型的ではないからとすぐに「非定型うつ病」と考えてしまう
・気分反応性や拒絶過敏性といった臨床特徴から,うつ病ではなくパーソナリティの問題だと決めつけてしまう
・併存(前駆)する不安症を見逃してしまう
・「双極性障害」を見逃したり,過剰診断してしまう
・休養を第一義に考えてしまう
・過度の陰性感情を持ってしまい,その結果として転帰不良となってしまう
・薬物療法を漫然と実施し,多剤併用大量処方となってしまう

双極性障害

双極性障害(急性期)

著者: 松尾幸治

ページ範囲:P.631 - P.637

ピットフォール
・「調子が良くなりました」に安心してしまう
・「買い物が多かったですか」の質問で診断してしまう
・「うつがなかなか治りません」という主訴で受診した患者に躁症状を確認しない
・注意することなく抗うつ薬を出してしまう
・リチウムのモニタリングをおろそかにしてしまう

双極性障害(維持期)

著者: 友利陽子 ,   高江洲義和

ページ範囲:P.638 - P.642

ピットフォール
・維持期にこそ本当の治療が始まる
・薬物療法だけでリカバリーは目指せない
・維持期は維持のみにあらず
・再発なければすべて良し?

不安症・強迫症・解離症・身体症状症

社交不安症

著者: 朝倉聡

ページ範囲:P.643 - P.648

ピットフォール
・口数が少ない患者からうまく症状を聞き出せず適切な評価ができない
・併存疾患についての理解不足から早期介入のチャンスを逃してしまう
・経験に頼ってしまい,薬物療法についての効果判定,減量,中止の予定の説明がおろそかになってしまう
・疾患理解と症状への配慮が不十分で治療中断へと繋がってしまう

全般不安症

著者: 大坪天平

ページ範囲:P.649 - P.652

ピットフォール
・全般不安症(GAD)の診断概念と診断基準が大きく変化していることへの認識不足
・GADは他の精神疾患と併存しやすいが,それらを考慮せず診療してしまう
・GADの治療開始が遅くなり,転帰が不良となってしまう
・GADに対しては何らかの心理社会的介入が必須だが,薬物療法のみで対処しようとする

パニック症

著者: 塩入俊樹

ページ範囲:P.653 - P.658

ピットフォール
・パニック発作=パニック症であると誤解する
・身体疾患や物質・医薬品の関与を見逃してしまう
・パニック症の併存症を見逃してしまう
・パニック症の病態や治療について,患者の理解を得られるような説明をしていない

強迫症

著者: 中尾智博

ページ範囲:P.659 - P.664

ピットフォール
・強迫症に苦手意識を持ってしまう
・自閉スペクトラム症やうつ病の併存についての注意不足
・強迫症の認知行動療法(CBT)=曝露反応妨害法(ERP)と考えてしまう
・不合理感が少ない(ない)場合は治療ができないと考えてしまう
・見かけの治療抵抗性にだまされてしまう
・COVID-19に関連したマスメディアの情報に流されてしまう

解離症

著者: 柴山雅俊

ページ範囲:P.665 - P.669

ピットフォール
・精神病と即断してしまう
・解離と即断してしまう
・神経発達障害との併存についての確認を怠ってしまう
・交代人格を見逃してしまう

身体症状症

著者: 中村敬

ページ範囲:P.670 - P.674

ピットフォール
・紹介医の見解を鵜呑みにして身体症状症と診断する
・患者の陰性感情を考慮せず,早々に心因モデルを提示する
・病気に対する患者の不安を打ち消そうと努める
・悪循環に目を向けず症状のみを治療の標的とする
・診察が症状の聴取のみに終始する
・身体症状の消失を目標に次々処方を繰り出す

心的外傷・ストレス関連障害

心的外傷後ストレス障害

著者: 井野敬子

ページ範囲:P.675 - P.680

ピットフォール
・患者が不安定になるのを恐れて治療者がトラウマの話を避けてしまう
・傷ついたこころを何とかしてあげたい一心で,「助かって良かったですね」などと患者の感じ方にそぐわない受け答えをしてしまう
・「対人不信」についての心理教育が十分にされていない
・「怒りのコントロール困難」についての心理教育が十分にされていない
・薬剤の副作用を過覚醒症状と判断してしまう
・出来事基準で吟味せずPTSDの診断をつけてしまう
・隠れたトラウマを見逃してしまう

急性ストレス障害

著者: 須賀楓介

ページ範囲:P.681 - P.685

ピットフォール
・急性ストレス障害(ASD)診断は便宜的な側面があることを理解していない
・ASDと心的外傷後ストレス障害(PTSD)の関係の認識不足
・安易に病理化してしまい,基本的ニーズ(衣食住・安全安心)の確認を怠ってしまう
・価値判断を押し付け,二次被害を招いてしまう

適応障害

著者: 平島奈津子

ページ範囲:P.686 - P.690

ピットフォール
・「暫定診断」の限界性についての理解不足
・適応障害の診断を考えて「うつ病の始まり」である可能性を除外してしまう
・患者が疾病化するに至った主観的な体験を理解していない
・患者の環境の全包囲を聴き逃し,間違った環境調整をしてしまう

パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害

著者: 林直樹

ページ範囲:P.691 - P.697

ピットフォール
・患者の訴えに流されて治療方針を決める
・患者の過剰な要求に安易に応じる
・患者への先入観に左右される
・制限設定を誤用する
・過剰な依存(理想化)を助長する
・治療者が自分を過信する

自己愛性パーソナリティ障害

著者: 井上幸紀

ページ範囲:P.698 - P.702

ピットフォール
・別の病名・病態で受診するので気付かない
・患者に振り回される
・周囲からの情報を軽んじる
・患者の個性や特性を考慮しない
・治療が完結しない

摂食障害

神経性やせ症

著者: 鈴木太

ページ範囲:P.703 - P.707

ピットフォール
・摂食障害を治療可能と見なさない
・患者が医学的に不安定な時期に体重回復に焦点づけない
・患者を入院させたのに低体重のままで退院させる
・患者が医学的に安定した後に体重回復に焦点づけない
・患者の体重が回復したのに精神病理を治療しない
・患者や家族と治療ゴールに合意できない

神経性過食症

著者: 野間俊一

ページ範囲:P.708 - P.712

ピットフォール
・標準体重なので軽症と思ってしまう
・患者のニーズを確認せずに治療してしまう
・他の行動上の問題を見逃してしまう
・治療態度がよくないときに冷たい態度を取ってしまう
・身体面のチェックを見落としてしまう
・過食は治すものと考えてしまう

発達障害

自閉スペクトラム症(小児)

著者: 桑原斉

ページ範囲:P.713 - P.718

ピットフォール
・自閉スペクトラム症(ASD)の診断を伝えない
・評価尺度を不適切に使ってしまう
・治療的アプローチと教育的アプローチ(SST)を混同してしまう
・合理的配慮を医療機関が決めてしまう
・家庭内の環境調整に関して,支援機関同士で譲り合ってしまう
・いきなり,イライラに薬を出してしまう
・地域の社会資源を考えずに,スクリーニングを実施してしまう

自閉スペクトラム症(成人)

著者: 岡田俊

ページ範囲:P.719 - P.723

ピットフォール
・来談の経緯を十分に踏まえないままに診断的面接へと進んでいないか
・当事者の体験を面接者の経験からみた「普通」に照らし合わせていないか
・併存精神症状を二次障害と表現することの当事者へのインパクトに気付いているか
・福祉的支援は権利であるとともに自立の一歩であることが心底から腑に落ちているか
・当事者は医療を望み、医療はそのニードに応じているという幻想に陥っていないか

注意欠如・多動症(小児)

著者: 山室和彦 ,   太田豊作

ページ範囲:P.724 - P.730

ピットフォール
・ADHDの診断に際しての不注意に気付かない
・ADHDの診断補助ツールについて理解が不十分
・ADHD治療薬の選択に際し,添付文書をよく確認しないまま処方してしまう
・ADHD治療薬の流通規制と登録について少し前の情報で止まっている
・ADHDにみられる併存疾患を見落としてしまう

注意欠如・多動症(成人)—本当はやりがいのある成人期ADHD診療

著者: 今村明 ,   山本直毅 ,   三宅通 ,   金替伸治 ,   大橋愛子 ,   田山達之 ,   小澤寛樹 ,   森本芳郎

ページ範囲:P.731 - P.736

ピットフォール
・ADHDの診断に自信が持てない
・「説明がよく分からなかった」と言われてしまう
・どの薬剤を選べばよいのか分からなくなってしまう
・服薬がきちんと行われていない
・突然患者が来なくなってしまう

認知症

若年性アルツハイマー病

著者: 數井裕光

ページ範囲:P.737 - P.741

ピットフォール
・視空間認知機能と言語機能を評価しない
・脳血流シンチグラフィー検査を実施せずにアルツハイマー病を否定する
・神経学的所見をとらない
・服薬遵守できる体制を整えずに抗認知症薬を処方する
・治療と仕事の両立支援を検討せずに退職されてしまう

レビー小体型認知症

著者: 出口彩香 ,   藤城弘樹

ページ範囲:P.742 - P.747

ピットフォール
・認知症進行期においてレビー小体型認知症(DLB)の過剰診断をしてしまう
・認知症初期においてDLBの過小診断をしてしまう
・レム睡眠行動障害(RBD)症状の性差についての留意点

血管性認知症

著者: 長田乾 ,   髙野大樹 ,   山﨑貴史 ,   加藤文太

ページ範囲:P.748 - P.754

ピットフォール
・血管性認知症の新たな概念についての認識不足
・複合病理についての理解不足
・心房細動と認知症の関連についての認識不足

前頭側頭葉変性症

著者: 横田修

ページ範囲:P.755 - P.761

ピットフォール
・診断には前頭側頭葉だけが重要と思ってしまう
・発症年齢の聞き取りをおざなりにしてしまう
・1つの症候群にきれいに当てはまらないと悩んでしまう
・形態画像の観察不足
・万引き,浪費,反社会的行動,易怒性を根拠にFTLDと診断してしまう
・予想される経過を教えずに通院を続けさせてしまう

睡眠障害

睡眠障害(不眠症)

著者: 吉池卓也

ページ範囲:P.762 - P.767

ピットフォール
・主観,客観の一方に偏って診断してしまう
・併存疾患を見逃してしまう
・精神疾患との縦断的関係を見過ごしてしまう
・不眠症の心性への配慮を欠いてしまう

睡眠障害(過眠症)

著者: 金子宜之 ,   鈴木正泰

ページ範囲:P.768 - P.772

ピットフォール
・過眠症診断の際に,二次性過眠症の可能性に注意しない
・過眠症の鑑別の際,精神疾患,身体疾患,薬物などや物質による原因を考慮しない
・睡眠不足症候群や長時間睡眠者の可能性を見落としてしまう
・ナルコレプシーや特発性過眠症を診断する際に睡眠検査を実施しない
・モディオダールやリタリンの処方に適応を遵守していない
・中枢性過眠症の治療の際に生活指導を行わない

物質関連・嗜癖性障害

アルコール使用障害

著者: 真栄里仁 ,   樋口進

ページ範囲:P.773 - P.777

ピットフォール
・依存症か否か,安易に決めつけてしまう
・治療目標を断酒のみと設定してしまう
・断酒を拒否する患者の表面的な言動に囚われてしまう
・同意がないと治療できないと考えてしまう
・底つきしないと酒を止めないと考えてしまう
・抗酒薬が絶対と考えてしまう
・医療者は依存症者の上に立ち,回復に導く存在と認識してしまう

抗不安薬・睡眠薬依存

著者: 稲川祐佳 ,   稲田健

ページ範囲:P.778 - P.783

ピットフォール
・「最初だけ」のつもりが漫然とベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZ-RAs)を処方し続けている
・他の医療機関の処方やお薬手帳の確認が不十分で,多剤併用,重複処方になってしまっている
・「外来で待たせたくない」の焦りから慌てて頓用処方してしまう
・不安や心配に対して対症的にBZ-RAsを処方してしまう
・3か月ごとの来院のため担当医への妊娠の報告が遅れ,BZ-RAsの使用が続いてしまっていた

大麻・覚醒剤使用障害

著者: 沖田恭治 ,   松本俊彦

ページ範囲:P.784 - P.789

ピットフォール
・違法薬物を使う人を“治療を受けるべき人”だと見なしてしまう
・診断基準に囚われすぎてしまう
・併存疾患を見過ごす,あるいは軽視してしまう
・守秘義務および告発義務についての認識の不足
・大麻関連物質に関する知識の不足
・物質使用が止まらない患者を見てなんとかしなければと焦ってしまう

ギャンブル障害

著者: 小林桜児

ページ範囲:P.790 - P.794

ピットフォール
・医療者は患者のギャンブルを止めさせることが仕事だと考えてしまう
・家族が患者の借金を肩代わりすることを容認してしまう
・患者の背景には発達障害や気分障害があると考えて薬物療法を過信してしまう
・「ギャンブルは止まっている」と言う患者の報告を鵜呑みにしてしまう

ゲーム障害

著者: 西村光太郎

ページ範囲:P.795 - P.801

ピットフォール
・新興依存症であるインターネットやゲームの使用障害について理解していない
・初診の際に当事者に「ゲームを止めよ,インターネットを止めよ」と言ってしまう
・背景に発達障害がないか確認しない
・問題になっている点が男女や年齢で異なっていることを見落としてしまう
・不登校状態の子どもに「学校に行け!」と安易に強制してしまう

その他

てんかん

著者: 谷口豪 ,   宮川希 ,   岩田遼

ページ範囲:P.802 - P.809

ピットフォール
・「小さな発作」を見逃してしまう
・発作性の症状=てんかん発作と考えてしまう
・「心因」を読み取りすぎてしまう
・脳波を読みすぎてしまう
・迷っても相談しない

心身症

著者: 吉内一浩

ページ範囲:P.810 - P.813

ピットフォール
・心身症の定義を確認せず診療してしまう
・心身症の評価に病態の評価を考慮しない
・初めからストレスを前提にしてしまう
・治療の動機付けが最重要かつ最難関であるということを認識していない
・単一の心理療法に頼ってしまう
・「身体疾患名」と「身体症状名」を混同してしまう

薬剤性精神障害

著者: 宮里勝政

ページ範囲:P.814 - P.820

ピットフォール
・初回面接でこちらが知りたいことを優先してしまう
・早期発見できず,意識障害のような重篤な病態になってしまう
・依存性薬物の急性効果,鎮静,覚醒,幻覚について診断を特定できない
・原疾患の治療と副作用の除去,どちらを優先するか迷ってしまう
・副作用情報の確認が怠りがちになってしまう

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目次

ページ範囲:P. - P.

次号予告

ページ範囲:P.822 - P.822

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.823 - P.823

奥付

ページ範囲:P.830 - P.830

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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