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文献詳細

雑誌文献

精神医学64巻6号

2022年06月発行

文献概要

特集 認知症診療の新潮流—近未来の認知症診療に向けて

認知症の人に対する財産管理支援

著者: 樋山雅美1 成本迅1

所属機関: 1京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学

ページ範囲:P.919 - P.925

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抄録 認知機能が低下するなどして,自分ひとりで財産管理を行うことが難しくなった場合,日常生活自立支援事業や成年後見制度を利用することが推奨されている。ただし,日常生活自立支援事業は,保険の加入や解約などの高度な契約は支援の対象とはしておらず,それぞれの契約に必要な能力が不十分であれば成年後見制度の利用が必要となる。ところが,成年後見制度の利用は進んでいるとは言えず,多くは家族からの支援を受けている。家族による財産管理は,支出の切り分けが煩雑となりやすく,経済的虐待に繋がる場合もある。こうした中で,金融機関は,高齢顧客への対応の柔軟化を図り,認知機能の状態にかかわらず,日常生活上不可欠な使途への預金の払い出しに応じる方法や判断能力の評価の実施を検討している。今後は,財産管理能力や契約能力の評価がより重要になると考えられ,日常診療の中でも,積極的な状況確認や助言が求められるようになると言えよう。

参考文献

1)星野卓也:認知症患者の金融資産200兆円の未来—2030年度には個人金融資産の1割に達すると試算.マクロ経済分析レポート.第一生命経済研究所,2018
2)総務省統計局:家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要. https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2020.pdf(2022年4月1日閲覧)
3)生命保険文化センター:2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査. https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf(2022年4月1日閲覧)
4)Belbase AB, Sanzenbacher GT:Cognitive aging and the capacity to manage money. Center for Retirement Research at Boston College 17:1-7, 2017
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7)Marson DC:Clinical and ethical aspects of financial capacity in dementia:a commentary. Am J Geriatr Psychiatry 21:382-390, 2013
8)Sherod MG, Griffith HR, Copeland J, et al:Neurocognitive predictors of financial capacity across the dementia spectrum:normal aging, mild cognitive impairment, and Alzheimer's disease. J Int Neuropsychol Soc 15:258-267, 2009
9)安田清:MCI・認知症のリハビリテーション—Assistive Technologyによる生活支援.エスコアール,2018
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11)金融機関高齢顧客対応ワーキング・グループ:高齢顧客の判断能力評価,及び意思決定支援における金融業界全体のルール策定についての提言」p58, 2019 https://www.dmsoj.com/report(2022年4月1日閲覧)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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