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特集 ジェンダーをめぐる諸課題を理解する
日本精神神経学会「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」について
著者: 松本洋輔1
所属機関: 1岡山大学病院ジェンダーセンター
ページ範囲:P.1118 - P.1126
文献購入ページに移動抄録 日本精神神経学会「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」は,性別違和を持つ人に対する身体的治療を行う医療機関で標準的に使われている。策定された理由に性別適合手術の違法性を阻却することが含まれていたため,比較的厳密に運用される傾向にある。複数診療科によるチーム医療の実施を一貫して求める一方,臨床の実際や社会的な状況に応じて柔軟に改訂されてきている。2018年4月からガイドラインに沿って行われた性別適合手術は保険診療化されることになった。保険診療化にあたってGID学会認定医が医療チームの中心となることが求められており,ガイドラインに日本精神神経学会以外の学会が認定する医師について記載されるようになった。2019年に採択されたICD-11で性同一性障害はgender incongruenceと改称され精神疾患のカテゴリーから外れることになったこともあり,精神科医の役割は依然として重要であるものの,ガイドラインの策定は他の学会との共同で行うことが望ましい状況となっている。
参考文献
1)判例タイムズ233号231頁より(いわゆるブルーボーイ事件判決)
2)山内俊雄,東博彦,五十嵐節,他「性転換治療の臨床的研究」に関する審議経過と答申.埼玉医科大学雑誌 23:313-329 1996
3)日本精神神経学会・性同一性障害に関する特別委員会:性同一性障害に関する答申と提言.精神経誌 99:533-540, 1997
4)WPATH(World Professional Association for Transgender Health):The standards of care for gender identity disorders;seventh edition, 2011 https://www.wpath.org/publications/soc(2022年7月1日閲覧)
5)日本精神神経学会性同一性障害に関する委員会:性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版).2006 https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/gid_guideline_no3.pdf, 2006(2022年7月1日閲覧)
6)日本精神神経学会「性同一性障害に関する委員会」(委員長:齋藤利和):性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第4版).精神経誌 114:1250-1266, 2012 https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/journal_114_11_gid_guideline_no4.pdf(2022年7月1日閲覧)
7)松本洋輔:(GID学会)認定医制度発足の意義.GID(性同一性障害)学会雑誌 11:58-61, 2018
8)佐々木新介,佐々木愛子,新井富士美,他:性同一性障害における問題行動の発生率の推移.GID(性同一性障害)学会雑誌 1:226-227, 2008
9)Zucker KJ, Bradley SJ:Gender identity disorder and psychosexual problems in children and adolescents, The Guilford Press 1995. [鈴木國文・古橋忠晃・早川徳香・他(訳):性同一性障害—児童期・青年期の問題と理解.みすず書房,2010]
10)Hembree WC, Cohen-Kettenis PT, Gooren K, et al:Endocrine Treatment of Gender-Dysphoric/ Gender-Incongruent Persons:An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 102:1-35, 2017
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