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文献詳細

雑誌文献

精神医学64巻8号

2022年08月発行

文献概要

特集 ジェンダーをめぐる諸課題を理解する

精神医学・医療における「性の問題」—「ジェンダー」と「ダイバーシティ」,そして差別・偏見

著者: 山内俊雄1

所属機関: 1埼玉医科大学

ページ範囲:P.1165 - P.1172

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抄録 精神医学は「性の問題」に不慣れであった。長い間,性対象や性行為のあり方について,あるべき姿を想定して正常か異常かを判断し,異常の原因を“精神病質あるいは精神病質人格”として捉えてきた。このような流れにインパクトを与えたのが「同性愛」であり,「性同一性障害」であった。そこから“ジェンダー”という視点が生まれ,“性のあり方の多様性”という発想へと発展したといえよう。
 そのような一連の流れの中で,精神医学もまた,“ダイバーシティ”という捉え方にどう向き合うかという課題に直面しており,このような問題を正しく受け止め対処することは,長い間,誤解と偏見に悩まされてきた精神を病む人たちにどう向き合うかという課題にも通じるものがあろう。

参考文献

1)山内俊雄:精神医学と性.仁明会精神医学研究 17:13-26, 2020
2)三宅鑛一:精神病理提要 増補第6版.南江堂,1942
3)植松七九郎:精神醫學 第2版.文光堂,1948
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12)山内俊雄:性同一性障害とその成因.脳の科学 20:637-644, 1998
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16)山内俊雄,山本蘭:性同一性障害をめぐる,わが国の環境はどう変わったか.GID(性同一性障害)学会雑誌 10:63-72,2017
17)武藤ひめ:医師でも仕事を失う……ジェンダー問題とSDGsと今後の希望.日本医事新報 5108:3, 2022
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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