icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学64巻9号

2022年09月発行

文献概要

特集 学校で精神疾患を「自分のこと」として教育する

教科書における精神疾患に関する記載の変遷—1950〜2002年までの保健体育の教科書にみる記載とメンタルヘルスリテラシー教育

著者: 吉岡久美子12 中根允文3

所属機関: 1福岡大学人文学部 2福岡大学大学院人文科学研究科 3長崎大学

ページ範囲:P.1197 - P.1206

文献購入ページに移動
抄録 本論文では,1950年から2002年までの教科書における精神疾患に関する記載の変遷について紹介し,メンタルヘルスリテラシー研究の示唆も踏まえて検討した。その結果(1)昭和25(1950)〜40(1965)年に入るまでは,精神疾患に関する記載として,精神障害(者)は理解し難い言動をとったり問題行動をとる人のように記載されていたこと,社会との関連として,優生手術の対象となるような記載がきわめて多くみられたこと,(2)昭和50(1975)年代に入ると記載内容が大きく変わるが,1980年代以降になると精神疾患にかかわる記載が消失していたこと,(3)メンタルヘルスリテラシー研究からの示唆として,精神疾患に関する正しい知識と適切な理解,そして態度と行動を身につける上で学校教育が果たす役割が大きいことについてまとめた。

参考文献

1)中根允文,三根真理子:精神障害に係るAnti-stigmaの研究 教科書にみるメンタルヘルス教育—中学校・高等学校の教科書における記載を通してー(1950年〜2002年までの「保健体育」教科書調査結果から,日社精医誌,22:452-473,2013
2)中根允文,吉岡久美子:学校教育と正しい知識の普及啓発について,精神医学 55:1047-1052,2013
3)教育図書株式会社:健康のよろこび 昭和25年度版.1950
4)講談社:標準中学保健体育 昭和46年度版.1971
5)開隆堂:保健体育 昭和37年度版.1962
6)学習研究社:新訂中学保健体育 昭和52年度版.1977
7)中根允文,吉岡久美子,中根秀之:こころのバリアフリーを目指して—日本人にとってのうつ病,統合失調症.勁草書房,2010
8)Nakane Y, Jorm AF, Yoshioka K, et al:Public beliefs about causes and risk factors for mental disorders:a comparison of Japan and Australia. BMC Psychiatry 5:33, 2005
9)Griffiths KM, Nanake Y, Christensen H, et al:Stigma in response to mental disorders:a comparison of Australia and Japan. BMC Psychiatry 6:21, 2006
10)吉岡久美子:保護者のメンタルヘルスリテラシー—保護者のhelp-seekingの特徴を中心にして.精神科 24:657-662,2014
11)Yoshioka K, Reavley NJ, Hart LM et al:Belief about first aid for mental disorders:results from a mental health literacy survey of Japanese high school students. Int J Cult Mental Health 8:223-230, 2016
12)Yoshioka K, Reavley NJ, Rosetto A:Associations between beliefs about the causes of mental disorders and stigmatising attitudes:results of a mental health literacy and stigma survey of Japanese public. Int J Cult Mental Health 45:183-192, 2016
13)中央教育審議会:「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)【概要】https://www.mext.go.jp/content/20210126-mxt_syoto02-000012321_1-4.pdf[2022年6月8日閲覧]

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?