文献詳細
文献概要
特集 DSM-5からDSM-5-TRへ—何が変わったのか
神経発達症群—DSM-5からDSM-5-TRへの変更点
著者: 小川しおり1 岡田俊2
所属機関: 1日本福祉大学教育・心理学部 2国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部
ページ範囲:P.1345 - P.1351
文献購入ページに移動本稿では主な神経発達症について,DSM-5-TRへの改訂で追加・修正された箇所を取り上げて,その意味合いについて考察する。
精神障害の診断と統計マニュアル第5版テキスト改訂版(DSM-5-TR)は,DSM-5と同様,精神保健に対する生涯にわたるアプローチを特徴としている。小児期の病態を整理することで,それらが人生の様々な段階においても現れ続け,多くの障害に影響を及ぼす発達の連続性によって影響を受ける可能性があることを強調している。DSM-5-TRでは,DSM-5と同様に,どのような医学的な問題であっても,慎重かつ包括的な評価なしに診断されるべきではないことが強調された。DSMの基準の多くは,両親または子どもと定期的に接する他の人が症状を観察することを要求しているため,養育者はこのプロセスにおいて不可欠な役割を担っている。DSM-5-TRでは,既存の基準がより正確な記述に更新され,過去10年間の科学的進歩と臨床経験を反映している。
神経発達症,特に知的発達症の併存がなく,社会適応が比較的良好なASDでは思春期から成人期になると特異的行動が曖昧になり特異度が低下する群があり,成人期の確かな診断と支援を行うためにも,特異的行動の発達過程を成人期まで追跡し,それを根拠に成人の診断が行われることが今後の改訂での課題であろう。
参考文献
掲載誌情報