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特集 DSM-5からDSM-5-TRへ—何が変わったのか
解離症群—DSM-5-TRの変更点とその意義
著者: 金吉晴1
所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
ページ範囲:P.1390 - P.1394
文献購入ページに移動抄録
DSM-5-TRの解離症診断では,DSM-Ⅳ以降に強調されてきた心的外傷との関係がさらに明確に記載され,外傷性脳損傷と対比され,トラウマモデルが強調された。解離性同一性障害の解説では,歴史的に解離とは異なった文脈で研究されてきた離人症状としての体外離隔体験が含められた。解離性同一性障害に生じる幻覚妄想様体験の記述は詳しくなり,シュナイダーの一級症状との異同の詳しい紹介,統合失調症との鑑別の手引きが追加されたが,幻覚・妄想という用語が注意深く避けられていることはDSM-5と変わらない。DSM-5で用いられていた転換症状という用語は,鑑別診断における機能的神経学的症状症(変換症)の項目となった。解離性障害は要素的な精神機能の統合の喪失として定義されており,人格の一部が主たる人格との統合を失って自動症的に活動をするというシャルコーやジャネの定義は反映されていない。
DSM-5-TRの解離症診断では,DSM-Ⅳ以降に強調されてきた心的外傷との関係がさらに明確に記載され,外傷性脳損傷と対比され,トラウマモデルが強調された。解離性同一性障害の解説では,歴史的に解離とは異なった文脈で研究されてきた離人症状としての体外離隔体験が含められた。解離性同一性障害に生じる幻覚妄想様体験の記述は詳しくなり,シュナイダーの一級症状との異同の詳しい紹介,統合失調症との鑑別の手引きが追加されたが,幻覚・妄想という用語が注意深く避けられていることはDSM-5と変わらない。DSM-5で用いられていた転換症状という用語は,鑑別診断における機能的神経学的症状症(変換症)の項目となった。解離性障害は要素的な精神機能の統合の喪失として定義されており,人格の一部が主たる人格との統合を失って自動症的に活動をするというシャルコーやジャネの定義は反映されていない。
参考文献
1)Charcot JM, Goetz CG:Charcot, The clinician;The Tuesday lessons. Raven Press, New York, 1987
2)O van der Hart, R Horst:The dissociation theory of Pierre Janet. J Trauma Stress 2:397-412, 1989
3)Heim G, Bühler KE:Psychological trauma and fixed ideas in Pierre Janet's conception of dissociative disorders. Am J Psychother 60:111-129, 2006
4)Sierra M:Depersonalization:A new look at a neglected syndrome. Social Care Neurodisabil 4:48-49, 2013
5)M Sierra, GE Berrios:Depersonalization;A conceptual history. Hist Psychiatry 8:213-229, 1997
6)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision(DSM-5-TR). American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2022[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳),染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,他(訳):DSM-5-TR精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2023]
7)Moreau de Tours J:Du hachisch et de l aliénation mentale:Études psychologiques. Paris Fortin, Masson and Cie, 1845
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9)Putnam F:Dissociative disorders in children and adolescents:A developmental perspective. Guildford Press, 1997
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