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特集 DSM-5からDSM-5-TRへ—何が変わったのか
身体症状症及び関連症群—心身二元論からの脱却
著者: 関口敦1
所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部心身症研究室
ページ範囲:P.1395 - P.1399
文献購入ページに移動抄録
DSMの改訂は,精神医学の知識と理解が進歩するにつれて,その反映として行われてきた。「身体症状症及び関連症候群」の最近の改訂は,これらの変化を端的に示している。特に,DSM-ⅣからDSM-5への改訂では,「身体症状症」という新たなカテゴリーが作成され,それまで「身体表現性障害」「虚偽性障害」と称されていた疾患群が再定義された。DSM-5-TRでは「心因性」や「転換性障害」といった概念から離脱し,心身二元論からの脱却がより明確になった。この枠組みは,身体症状は単なる精神疾患の表現型との理解を超えて,身体的苦痛と精神的苦痛は密接に関連していることを認識し,身体症状の訴えが,意識的または意図的なものであるかを問わないという考え方に基づいている。
本稿では,DSM-5-TRでの「身体症状症および関連症群」における改訂点について,身体科(心療内科)医としての視点も意識しながら,見解を述べる。
DSMの改訂は,精神医学の知識と理解が進歩するにつれて,その反映として行われてきた。「身体症状症及び関連症候群」の最近の改訂は,これらの変化を端的に示している。特に,DSM-ⅣからDSM-5への改訂では,「身体症状症」という新たなカテゴリーが作成され,それまで「身体表現性障害」「虚偽性障害」と称されていた疾患群が再定義された。DSM-5-TRでは「心因性」や「転換性障害」といった概念から離脱し,心身二元論からの脱却がより明確になった。この枠組みは,身体症状は単なる精神疾患の表現型との理解を超えて,身体的苦痛と精神的苦痛は密接に関連していることを認識し,身体症状の訴えが,意識的または意図的なものであるかを問わないという考え方に基づいている。
本稿では,DSM-5-TRでの「身体症状症および関連症群」における改訂点について,身体科(心療内科)医としての視点も意識しながら,見解を述べる。
参考文献
1)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed(DSM-5). American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2013[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳):DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014]
2)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision(DSM-5-TR). American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2022[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳),染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,他(訳):DSM-5-TR精神疾患の診断・統計マニュアル,新訂版.医学書院,2023]
3)Dimsdale JE, Creed F, Escobar J, et al:Somatic symptom disorder:An important change in DSM. J Psychosom Res 75:223-228, 2013
4)Carson AJ, Brown R, David AS, et al:Functional(conversion)neurological symptoms:research since the millennium. J Neurol Neurosurg Psychiatry 83:842-850, 2012
5)Henningsen P, Zipfel S, Herzog W:Management of functional somatic syndromes. Lancet 369:946-955, 2007
6)Yates GP, Feldman MD:Factitious disorder:a systematic review of 455 cases in the professional literature. Gen Hosp Psychiatry 41:20-28, 2016
7)日本心身医学会:心身症の定義.心身医学31:574-576, 1991
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