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特集 DSM-5からDSM-5-TRへ—何が変わったのか
DSM-5-TRにおける睡眠覚醒障害分類の特徴
著者: 本多真1
所属機関: 1東京都医学総合研究所精神行動医学研究分野睡眠プロジェクト
ページ範囲:P.1410 - P.1415
文献購入ページに移動抄録
DSM-5-TRにおける睡眠覚醒障害分類は,国際標準の睡眠覚醒障害分類(ICSD-3,ICD-11)と異なり,包括的分類ではなく興味ある10疾患のみを対象とし,「不眠,過眠,寝ぼけ,リズム」という4症状に基づく伝統的分類法からも一部逸脱している問題がある。DSM-5-TRの改訂でも大枠の変更は皆無であった。一方で,睡眠医療非専門家を念頭に用語・概念の解説や病態生理・睡眠検査結果に基づく重症度判定の目安など,診断基準以外の解説は充実しており,DSM-5-TRでは用語解説コーナーが新設された。この診断体系で特筆されるのは,精神疾患,身体疾患,他の睡眠覚醒障害が伴う場合でも,「独立した医療上の留意を要する」重篤な症状がある場合(不眠障害,悪夢障害),「重症度や症状の特徴が精神疾患・身体疾患で予測される程度を超える」場合(過眠障害)には,独立して睡眠覚醒障害の診断ができる点である。併存症の概念を幅広くとることは1つの見識ではあるが,過剰診断リスクが懸念される。
DSM-5-TRにおける睡眠覚醒障害分類は,国際標準の睡眠覚醒障害分類(ICSD-3,ICD-11)と異なり,包括的分類ではなく興味ある10疾患のみを対象とし,「不眠,過眠,寝ぼけ,リズム」という4症状に基づく伝統的分類法からも一部逸脱している問題がある。DSM-5-TRの改訂でも大枠の変更は皆無であった。一方で,睡眠医療非専門家を念頭に用語・概念の解説や病態生理・睡眠検査結果に基づく重症度判定の目安など,診断基準以外の解説は充実しており,DSM-5-TRでは用語解説コーナーが新設された。この診断体系で特筆されるのは,精神疾患,身体疾患,他の睡眠覚醒障害が伴う場合でも,「独立した医療上の留意を要する」重篤な症状がある場合(不眠障害,悪夢障害),「重症度や症状の特徴が精神疾患・身体疾患で予測される程度を超える」場合(過眠障害)には,独立して睡眠覚醒障害の診断ができる点である。併存症の概念を幅広くとることは1つの見識ではあるが,過剰診断リスクが懸念される。
参考文献
1)本多真:睡眠障害の国際分類(ICD-11とICSD-3).日本臨牀78(増刊6):14-20, 2020
2)American Academy of Sleep Medicine(編), 日本睡眠学会診断分類委員会(訳):睡眠障害国際分類,第3版.ライフ・サイエンス,2018
3)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision(DSM-5-TR). American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2022[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳),染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,他(訳):DSM-5-TR精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2023]
4)Honda M, Kimura S, Sasaki K, et al:Evaluation of pathological sleepiness by multiple sleep latency test and 24-hour polysomnography in patients suspected of idiopathic hypersomnia. Psychiatry Clin Neurosci 75:149-151, 2021
5)Mignot E, Lin L, Finn L, et al:Correlates of sleep-onset REM periods during the multiple sleep latency test in community adults. Brain 129:1609-1623, 2006
6)Troester M, Quan S, Berry R:The AASM manual for the scoring of sleep and associated events;rules, terminology and technical specifications Ver3. Amercian Academy of Sleep Medicine, 2023
7)Duffy JF, Abbott SM, Burgess HJ, et al:Workshop report;Circadian rhythm sleep-wake disorders:gaps and opportunities. Sleep 44:zsaa281, 2021
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