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文献詳細

雑誌文献

精神医学65巻11号

2023年11月発行

文献概要

特集 精神疾患回復の時間経過を見通す

高次脳機能障害における回復の時間経過

著者: 藤川真由12 斎藤文恵1 黒瀬心13 三村將1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 2東北大学病院てんかん科 3量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所脳機能イメージング研究部

ページ範囲:P.1529 - P.1536

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抄録
 高次脳機能障害の病態と日常生活について,短期間と長期間の時間経過の中での変化を対比して検討した。症例は交通事故による外傷性脳損傷によりびまん性軸索損傷を生じた40代の男性である。もともと優秀なエンジニアであったが,受傷後の早期に復帰した職場では,不眠,意欲低下,体調不良を生じ,適応反応症として就労継続が困難となり退職した。短期的経過では,上記の症状の持続とともに,高次脳機能障害として,特有のこだわり・固執傾向に伴う収集行動とため込み行動を認め,自宅内はほとんど寝るスペースもなく,日常生活に支障が生じた。長期的経過では,症状自体には大きな変化を認めなかったが,公認心理師やソーシャルワーカーを含めた治療チームの介入により,生活の質は大幅に改善した。高次脳機能障害においては長期にわたる多職種による介入・関わりが重要である。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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