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文献詳細

雑誌文献

精神医学65巻2号

2023年02月発行

特集 精神医療・精神医学の組織文化のパラダイムシフト

共同創造に向けた精神医療・精神医学のパラダイムシフト

著者: 綾屋紗月1

所属機関: 1東京大学先端科学技術研究センター

ページ範囲:P.155 - P.161

文献概要

抄録
 近年,自閉スペクトラム症に関する研究やサービスの在り方に対して,当事者から異議申し立てがなされるなど,共同創造に対する意識が高まってきた。しかし共同創造を実践する上では障害者などのマイノリティグループに対して専門家および当事者が持つスティグマが障壁となる。スティグマ低減に関する先行研究では,異なるグループ間での集団レベルの対等性と個人レベルの対等性の両方が必要だとされている。前者を実現するには,当事者コミュニティと専門家コミュニティが,それぞれ独自に持つ歴史・文化・知恵を互いに同等なものとして尊重する必要がある。また後者を実現するには,当事者のみならず専門家も自らの個人史を振り返り,わかちあう必要がある。このスティグマの除去に加え,当事者コミュニティと専門家コミュニティの共同においては,それぞれのグループの代表者と双方をつなぐ仲介者の果たすべき役割が大きいと言える。

参考文献

1)Sanderson K:High-profile autism genetics project paused amid backlash. Nature 598:17-18, 2021
2)Lord C, Charman T, Havdahl A, et al:The Lancet Commission on the future of care and clinical research in autism. Lancet 399:271-334, 2022
3)Pukki H, Bettin J, Outlaw AG, et al:Autistic Perspectives on the Future of Clinical Autism Research. Autism in Adulthood 4:93-101, 2022
4)Millar SL, Chambers M, Giles M:Service user involvement in mental health care:an evolutionary concept analysis. Health Expectations 9:209-221, 2016
5)McDaid S:An equality of condition framework for user involvement in mental health policy and planning:evidence from participatory action research. Disability & Society 24:461-474, 2009
6)Horrocks J, Lyons C, Hopley P:Does strategic involvement of mental health service users and carers in the planning, design and commissioning of mental health services lead to better outcomes? Int J Consum Stud 34:562-569, 2010
7)熊谷晋一郎,秋元恵一郎,綾屋紗月,他:言いっぱし聞きっぱなしの「当事者研究会議」.当事者研究と専門知—生き延びるための知の再配置(臨床心理学増刊第10号)pp 8-25, 2018
8)Link BG, Phelan JC:Conceptualizing Stigma. Annual Review of Sociology 27:363-385, 2001
9)日本工学アカデミー:インクルーシブなSTEM研究環境の構築,2022

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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