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特集 精神医療・精神医学の組織文化のパラダイムシフト
D-OODAで取り組む診療パラダイムシフト—“抱えこみからつなぐ医療”へ(精神科病院編)
著者: 渡邉博幸12
所属機関: 1医療法人学而会木村病院 2千葉大学社会精神保健教育研究センター
ページ範囲:P.177 - P.184
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小中規模の単科精神科病院で,少ない人員と時間の制約の中で,収支バランスを悪化させず,診療構造や組織文化を転換するためにはどのような方法があるだろうか? 既存の方法論と到達目標が明確に定まっており,複数の取り組みを並行する必要がある場合は,PDCAサイクルをもとにしたプロジェクト管理が選択されるであろうが,この方法は計画と評価に時間を取られ,グループ内に管理階層性を生じる弊害がある。小規模の組織で行うパラダイムシフトには,不測の事態に対応可能で柔軟性に富むD-OODAループのほうが適していると言える。筆者の所属する民間単科精神科病院では,6年間で双方の管理手法をもとに,100床の病床削減・地域移行をはじめとした“抱えこみからつなぐ医療”への転換を果たし,支援者-当事者がともに取り組む共同創造(co-production)によって企画・運営を行うショートケアや共同作業所を実現している。
小中規模の単科精神科病院で,少ない人員と時間の制約の中で,収支バランスを悪化させず,診療構造や組織文化を転換するためにはどのような方法があるだろうか? 既存の方法論と到達目標が明確に定まっており,複数の取り組みを並行する必要がある場合は,PDCAサイクルをもとにしたプロジェクト管理が選択されるであろうが,この方法は計画と評価に時間を取られ,グループ内に管理階層性を生じる弊害がある。小規模の組織で行うパラダイムシフトには,不測の事態に対応可能で柔軟性に富むD-OODAループのほうが適していると言える。筆者の所属する民間単科精神科病院では,6年間で双方の管理手法をもとに,100床の病床削減・地域移行をはじめとした“抱えこみからつなぐ医療”への転換を果たし,支援者-当事者がともに取り組む共同創造(co-production)によって企画・運営を行うショートケアや共同作業所を実現している。
参考文献
1)渡邉博幸:『抱える』医療から『つなぐ』医療へ—総合病院精神科のダウンサイジングと地域精神医療の取組み.日本社会精神医学会雑誌 21:116-123, 2012
2)渡邉博幸,木村大:精神科救急病院でのNew Long Stay防止統合プログラムの導入と実践.精神科救急 23:31-34, 2020
3)渡邉博幸:入院治療から地域医療へ—長期入院者の退院支援にどう取り組むか?.こころの科学 210:60-65, 2020
4)渡邉博幸:地域における妊産婦メンタル支援の取り組み.臨床精神医学 49:851-859, 2020
5)von Lubitz DKJE, Beakley JE, Patricelli F:‘All hazards approach' to disaster management:The role of information and knowledge management, Boyd's OODA Loop, and network-centricity. Disasters 32:561-585, 2008
6)Tanui DJ:Application of Boyd's OODA loop to emergency response. J Emerg Manag 19:461-468, 2021
7)松木悟志,榎原雅代,焼田まどか:精神科病院における家族支援チーム(FAST)の意義と実践.精神科治療学 35:1119-1123, 2020
8)松井哲也,石井雅也,信田正人,他:ハローワークとの協働による,ひきこもりの人のための就労支援プログラム—「気づきの対話モデル」を援用して.精神科治療学 37(増刊号):389-393, 2022
9)松井哲也,郡司毅,信田正人,他:参加メンバーと創るショートケア—私たちは心理的安全性と雑談を大切にする.精神科治療学 36:1247-1252, 2021
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