精神医学65巻5号

2023年05月発行

記事購入ページに移動

増大号特集 いま，知っておきたい発達障害 Q＆A 98 3 病態

Q12 発達障害に育て方の影響はありますか？

著者： 八木淳子¹²

所属機関： ¹岩手医科大学医学部神経精神科学講座 ²岩手医科大学附属病院児童精神科

ページ範囲：P.564 - P.566

A この問いを「発達障害が発症する主要な原因は育て方にあるのか？」と言い換えれば，その答えは「いいえ」になります。発達障害は，遺伝的要因（生まれつき）が関与する脳機能の違いにより，幼少期から行動面や情緒面，認知面に特徴（困難）がみられる状態であり，親の育て方が原因で発達障害が発症するわけではありません。一方で，不適切な養育やアタッチメントの問題が発達に影響を及ぼすことも知られてきています。

参考文献

1）Bishop DVM, Snowling MJ：Developmental dyslexia and specific language impairment：same or different? Psychol Bull 130：858-886, 2004

2）神尾陽子：発達障害の疑いのある子どもとその親への早期対応．小児科臨床 74：1301-1304, 2021

3）神尾陽子：自閉スペクトラム症—自閉症の発見（情緒的交流の自閉的障害：Leo Kanner）．精神医学 60：1067-1073, 2018

4）L・アラン・スルーフ，バイロン・イーグランド，エリザベス・A・カールソン，他（著），数井みゆき（監訳）：人間の発達とアタッチメント—逆境的環境における出生からの成人までの30年にわたるミネソタ長期研究．精神書房，2022

5）Sonuga-Barke EJS, Kennedy M, Kumsta R, et al：Child-to-adult neurodevelopmental and mental health trajectories after early life deprivation：the young adult follow-up of the longitudinal English and Romanian Adoptees study. Lancet 389：1539-1548, 2017

6）Plomin R, Spinath FM：Intelligence：genetics, genes, and genomics. J Pers Soc Psychol 86：112-129, 2004

7）Fuller EA, Oliver K, Vejnoska SF, et al：The Effects of the Early Start Denver Model for Children with Autism Spectrum Disorder：A Meta-Analysis. Brain Sci 10：368, 2020