文献詳細
特集 複雑性PTSDの臨床
複雑性PTSDの心理教育—心理教育テキスト『今を生きるヒント』の紹介
著者: 千葉比呂美1 大江美佐里1
所属機関: 1久留米大学医学部神経精神医学講座
ページ範囲:P.1123 - P.1130
文献概要
トラウマ関連疾患における心理教育の有用性は幅広く知られており,最も基本的かつ必須のアプローチとして各治療法の導入部に位置づけられる,いわば治療の根幹をなすものである。長年にわたってトラウマに曝された経験を持つ患者は,これまでの環境が「当たり前の日常」であり,今身の回りで起こっている問題を,もともとの自分の性格傾向や弱さと捉えていることも珍しくない。体験したトラウマが当事者に与える影響についての正確な知識,それに対する対処法を学び,回復の糸口へとどう導いていくか。本稿では複雑性心的外傷後ストレス症(PTSD)の心理教育について,できる限り具体的にイメージできるよう,当講座で使用している複雑性PTSD特有の3症状[感情調整の困難(affect dysregulate),否定的な自己概念(negative self-concept),対人関係の困難(disturbances in relationships)]に焦点を当てた心理教育テキスト『今を生きるヒント』に沿って概説する。
参考文献
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