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文献詳細

雑誌文献

精神医学65巻8号

2023年08月発行

文献概要

特集 複雑性PTSDの臨床

複雑性PTSDに対するトラウマ焦点化治療

著者: 飛鳥井望1

所属機関: 1特定医療法人社団青山会青木病院

ページ範囲:P.1131 - P.1137

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抄録
 トラウマ焦点化認知行動療法や眼球運動による脱感作・再処理法(EMDR)といったトラウマ焦点化治療は,欧米の心的外傷後ストレス症(PTSD)治療ガイドラインでは第一選択治療として揺るぎない地位を築いている。複雑性PTSDには,従来のトラウマ焦点化治療よりも,安定化の段階からトラウマ記憶処理の段階に進める段階的治療が優るという論説もあるが,それには反証もあり,治療エビデンスの蓄積もいまだ十分でないため,エビデンスに基づいた治療推奨までには至っていない。複雑性PTSDは,PTSDに安定したアタッチメントスタイルの形成不全が加重された病態と理解することで治療の組み立てがしやすくなる。わが国での臨床実践経験からは,複雑性トラウマを抱えたPTSD患者であっても,いくつかの留意点をふまえながら従来のトラウマ焦点化治療を活用することで治療的有用性が十分期待できる。本稿では複雑性PTSDならではの治療的困難に対する留意点として,特にアセスメントと治療関係構築について取り上げた。

参考文献

1)フォーブスD,ビッソンJI,モンソンCM,他(編),飛鳥井望(監訳),飛鳥井望,亀岡智美(訳):PTSD治療ガイドライン,第3版.金剛出版,2022
2)Asukai N, Saito A, Tsuruta N, et al:Efficacy of exposure therapy for Japanese patients with posttraumatic stress disorder due to mixed traumatic events:a randomized controlled study. J Trauma Stress 23:744-750, 2010
3)Kameoka S, Tanaka E, Yamamoto S, et al:Effectiveness of trauma-focused cognitive behavioral therapy for Japanese children and adolescents in community settings:A multisite randomized controlled trial. Euro J Psychotraumatoligy 11:1, 2020
4)飛鳥井望(編):複雑性PTSDの臨床実践ガイド—トラウマ焦点化治療の活用と工夫.日本評論社,2021
5)オルフM,モンソンCM,リグスDS,他:心理療法—効果を生み出す中核的な共通要素.PTSD治療ガイドライン,第3版.金剛出版,pp 123-136
6)飛鳥井望:複雑性PTSDの診断概念と治療論をめぐる考察.日本評論社,pp 23-41
7)ハーマンJL:トラウマからの回復.日本評論社,pp 10-22,日本評論社,2021
8)de Jongh A, Resick PA, Zoellner LA, et al:Critical analysis of the current treatment guidelines for complex PTSD in adults. Depress Anxiety 33:359-369, 2016
9)Hoeboer CM, de Kleine RA, Oprel DAC, et al:Does complex PTSD predict or moderate treatment outcomes of three variants of exposure therapy? J Anxiety Disord 80:102388, 2021
10)飛鳥井望:トラウマ焦点化治療による複雑性PTSD治療のエビデンスと要点.日本評論社,pp 190-203

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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