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雑誌詳細

文献概要

特集 複雑性PTSDの臨床

精神科一般外来での複雑性PTSD診療

著者: 村上伸治1

所属機関: 1川崎医科大学精神科学教室

ページ範囲:P.1152 - P.1157

抄録
 複雑性心的外傷後ストレス症(PTSD)患者は信頼関係を持つことに自体に困難があり,体験を語ること自体も病状悪化をさせやすい。そのため,多忙な精神科一般外来での複雑性PTSD診療は容易ではない。だが,心理教育は必要であり可能である。患者はトラウマ体験や症状に圧倒されており,自分が置かれた状況を理解し,疾患を異物化して認識するために,地図やモデルを必要としている。まず,複雑性PTSDという疾患やその症状を患者に合わせて説明することが求められる。そして,理解しやすい説明モデルとして筆者は「延焼モデル」を考案し,トラウマの影響を火事の延焼で説明し,延焼を食い止める防火壁などもイメージしてもらうようにしている。一般精神科外来では,トラウマ記憶そのものへのアプローチは難しいが,レジリエンスを考えた,周辺的なアプローチは可能と考えられ,神田橋條治による養生法なども有用である。

参考文献

1)杉山登志郎:統合失調症と発達障害と複雑性PTSD.そだちの科学 36:2-10, 2021
2)飛鳥井望,神田橋條治,原田誠一,他:複雑性PTSDとは何か.pp 11-129,金剛出版,2022
3)杉山登志郎:テキストブックTSプロトコール—子ども虐待と複雑性PTSDへの簡易処理技法.pp 13-28,日本評論社,2021
4)村上伸治:精神科日常臨床におけるトラウマへの精神療法.青木省三,村上伸治,鷲田健二(編):大人のトラウマを診るということ.pp 171-185,医学書院,2021
5)神田橋條治:「指いい子」.神田橋條治:神田橋條治が教える心身養生のための経絡・ツボ療法.pp 15-20,創元社,2020
6)神田橋條治:PTSDの治療.臨精医 36:417-433, 2007

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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