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雑誌詳細

文献概要

特集 複雑性PTSDの臨床

潰されて終わって堪るか—サバイバーの私が複雑性PTSDを克服した過程

著者: 小石川真実

所属機関:

ページ範囲:P.1165 - P.1171

抄録
 私は両親の精神的暴力からサバイブした。親の精神的暴力は複雑性PTSD(CPTSD)の典型だ。私の場合,暴力の本質は自尊心の破壊と主体性の剝奪だった。性格も能力も存在自体もことごとく否定され,母と同じ感じ方・考え方をし,母が望む欲求を持てと強いられた。結果,私は「私はこの世に生きる資格がない」という全き自己否定と「自分がどう感じ,どう考え,何がしたいのかわからない」という自己同一性障害という心的外傷を負った。さらにその結果,うつ病と境界性パーソナリティ障害(BPD)というCPTSDを発症した。26歳から精神科にかかった私は37歳でやっと,親が私に加えてきた仕打ちは誤りだったという私の訴えに全面的に同意してくれる医師に出会い,急速に回復し始めた。「私にもほかの人たち同様,生きる資格がある」と思えたからだ。だから精神科の先生方には患者が気が済むまで訴えを聴き,どの患者にも「潰されて終わって堪るか」と思わせてあげてほしい。そして回復軌道に乗ったら患者の自己治療の良き伴走者になってほしい。

参考文献

1)小石川真実:親という名の暴力.高文研,2012
2)小石川真実:私は親に殺された!—東大卒女性医師の告白.朝日新聞出版社,2015
3)小石川真実:大いなる誤解・親子が殺し合わないために—子どもの魂を健やかに育て,幸せな親子関係を築くために必要なこと.金剛出版,2018

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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